2015年3月12日木曜日

投資家にとってのROA (後編)

低ROA高ROE企業は、高ROA高ROE企業に対して劣っているのか。私はROEは高ければ高いほどいいと考えているが、ROAも同じように高ければ高い方がいいのか。

同一業種であれば、ある程度Yesと言えるかもしれない。
例えば、レストランチェーンを例に考えてみよう。

 「利益を出すには出店が必要」
        ↓
 「出店するには店舗の取得が必要」
        ↓
 「店舗の取得にはお金が必要」

レストラン出店による利益獲得は、物理の制約があるため、およそ上記の筋書きから逃れることは不可能だ。せいぜい「店舗の取得」を「居抜きの賃借」に切り替え、初期投資を抑えるくらいか。
だとすると、レストランを営む企業間のROAの高低は投資回収の速度の差を表し、そのまま成長スピードにも影響するだろうから、ROAは高ければ高いほどいい、ということが言えそうだ。

では、レストランチェーンとソフトウェア開発会社を比べたら? あるいはソフトウェア開発会社と銀行を比べたら?
ビジネスモデルを考えれば、上記3業種のROAはおおむね下記のようになるはずだ。


【ROA高】 ソフトウェア開発会社
(ソフトウェアは販売や保管に場所を取らず複製も無料。資産効率の制約を受けない)

【ROA中】 レストランチェーン
(店舗取得が必要なので、ある程度、資産効率の制約がある)

【ROA低】 銀行
(貸出金利は1%やそこらなので、ROAの上限もその程度)


お金を貸して金利を貰うというビジネスモデルである銀行は、どれだけ優れた経営をしても、理論上、総資産収益率は貸出金利以上にはならないはずで、ご存じの通り、現在の貸出金利はとても低い。そのため、優れた銀行は優れたソフトウェア会社にROAで勝ることはできない。

だとしても、それは銀行がソフトウェア開発会社よりビジネスモデルで劣っていることを意味しない(と少なくとも私は思う)。そして、ビジネスモデルにより不可避的にROAが低いのだからという理由でROEが低くても投資家は許してくれない。

だから、銀行はレバレッジをかけまくってROEを高める。預金という非常にコストの低い負債を用いて。(銀行の自己資本比率はほとんど1桁台だ)
他の事業会社と違い、銀行におけるレバレッジはその負債の性質ゆえにリスクが低い。

つまり、銀行という業種のROAが低いことは恥でもなんでもない。むしろ預金によるレバレッジは銀行に与えられた特権であり、それによるROE向上は羨望の対象にすらなるはずだ。
また、羨望の対象となるかどうかは知らないし、お国による違いはあるのだろうが、電力会社も低ROAを高レバレッジによってカバーしてROEを向上させるビジネスモデルと言える。電力会社の設備投資効率を投資家を満足させるレベルに高めようとすると、電力料金を高値にせざるを得ないが、これには社会的な反発が大きい。だから低ROAになる。しかし、電力料収入は非常に安定したキャッシュフローであるので、それを安全弁として景気敏感業種などよりははるかに安全にレバレッジを高めることができる。これもたばこ会社ほどではないが、ある意味、羨ましいビジネスモデルだ。


高ROA銘柄は議論の余地なく素晴らしい。だが、ROAで機械的なスクリーニングをかけていると、安全なレバレッジのかけ方にビジネスモデルの粋がある優れた業種や企業を見落としてしまうという、割と普通な結論で締めさせていただきたい。

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