2017年6月20日火曜日

学力別就職先指南

 幸福の方程式は千差万別だが、不幸な人は幸福ではない、ということははっきりしている。ということは、幸福になるための第一歩は不幸になることを避けることだ。さて、不幸とは何だろう。もちろんこれにも多種多様な形態がある。一つ一つここで並べ立てたところで書き手も読み手も愉快な気持ちにはならないだろうし、この投稿の主旨とも違う。ここでは普遍的な不幸の形態を一つ二つ抽出すれば足りる。不幸のもとになるもの、それは「金」と「労働」である。言うまでもなく二つは密接に結びついている。報酬、労働時間、社風などにおいて劣悪な条件の労働に従事せざるを得ない時、人はほぼ確実に不幸になる。
 就労前の方がこのブログを読んでいる可能性は皆無に等しいと承知しているが、これからお子様を育てられるという方はかなり多いだろう。その助けになればと思い、いつもより内容が直接的で下品な投稿となってしまう恐れを振り払い、不幸になりにくい就職先というのを学力別に選定してみた。

 本題に入る前に心に留めて置いてもらいたいのは、「社会の変革が激しいこれからの時代、学歴など役に立たなくなるし、一流企業の安定性も全く保証されていない。個人がそれぞれ生きる力とスキルを身に着けることが重要だ」というもっともらしい言い分を一切無視するという保守的な姿勢を堅持することである。ステレオタイプのこの主張は抽象的すぎて何も言っていないことと同じだ。人生に対するアドバイスとして決して役に立つことはない。
 確かにどんな企業でも自分の退職まで完全な安定が保証されていることなどありえないが、大企業がベンチャーや中小企業に比べれば遥かに安定しているということも疑いようのない事実だ。多様な顧客基盤、過去から蓄積された技術などが、その安定性を担保している。何より、仮にその大企業が破綻しようとも、第二の人生を始めるにあたり大企業に勤務していたという事実は相当有利に働く。
 高い学歴はこれらの優良企業に就職する際の必須要件となるばかりでなく、芸術家になるにせよ芸能人になるにせよ、その仕事においてプラスに働いてくれるだろう。社会の変革が激しく、価値観が多様化するほど、人は人を計る時、学歴という単純なシグナルに頼らざるを得なくなる。
 目的がはっきりしているほど人は努力の効率が向上するので明確にしておこう。勉強するのは「いい会社に入って、安定した生活を得るための選択肢を増やすため」という、進歩派が聞けば眉をひそめるであろう、身も蓋もない即物的なものと割り切る。これが本題前の前提となる。

 ところで選択肢が増えたからといって、学生は世間知らずだ。社会のことなど何にも知らない。そんな無知な状態でイメージする「誰もが羨む一流企業」が就職先として最適である可能性は極めて低い。メガバンクやANA、JTB、食品会社など、就活生が選ぶ就職先人気ランキングは身近な大企業ばかりに占拠されており、彼らが何も知らないことを端的に表している。彼らに人生の岐路において選択の主導権を渡すのは、彼ら自身のためにならないのは火を見るより明らかなので、ここはひとつ、分別ある大人が導いてやらねばなるまい。

 で、ようやく本題だ。ここから(私基準で)下品度が加速度的に増すので、さっさと片づけてしまう。文中に出てくるカテゴリーはあくまで学力をおおざっぱに表すための便宜的な括りであり分け方が雑すぎるなどという突っ込みはどうぞ学歴マニアが集う場所で存分にやってもらうとよろしいのではなかろうかと思うし記載内容は当然すべての人に当てはまる普遍的な内容というわけではないのは当たり前すぎて読者を馬鹿にしている気がするので敢えて言わないよという注意事項を最初にまくし立てておいてさあ始めましょうか。


【大学に進学しない場合】
 学力不足や経済的理由により大学進学をしない道を選んだとしても、素晴らしい就職先というのは当然存在する。一番お勧めしたいのは、工業高校へ進学し、そのまま重厚長大産業かインフラ関連業の作業員として就職することだ。
<インフラ関連> 通信、電力、ガス
<重厚長大産業> 鉄鋼、化学、ガラス、製紙など

 大企業であれば、40歳で年収700万くらいになるし、福利厚生も非常に厚い。いわゆる偏差値50に満たない場合は無理して大学へ進学するよりもこういうルートは一考に値する。大企業の工場は工業高校から人をたくさん採用したくてもなかなか集められず、遠方の高校まで出向いて求人をかけているくらいの売り手市場だ。


【日東駒専レベル】
 何も考えずに就職活動しているとブラック企業につかまってしまいがちなカテゴリーだと思う。お勧めは専門商社や、BtoBに従事する大手製造会社の販売子会社だ。お勧めポイントとして、決まり切った顧客へのルート営業などが多いため地獄のノルマと無縁で、社の雰囲気が良いところが多い。異性も多いし。年収はピンキリだが、40歳700万円くらいのところを目指すのがいいのではなかろうか。


【MARCHレベル】
 中堅素材メーカーの総合職をお勧めしたい。なぜ素材メーカーか。それは今の儲けの本質が過去の遺産にあるからだ。皆が必死に働かなくても会社はそれなりに儲かり、大量の窓際族を養う余裕もある。また採用人数が少ない割に知名度もないので就職難易度は高くない。入社後も競争が緩い。能力がちょっとあって、ほんの少し頑張りさえすれば、競争激しい他業界と比べて出世もそれほど難しくない。もっとも役員にまでならない限り、日本企業での出世は責任ばかり重く給与はほとんど変わらないので、経済合理性はないものと覚悟すべし。40歳年収の目安は800-900万円。


【早慶レベル】
 上位素材メーカーをお勧めしたい。理由は中堅素材メーカーと同じ。40歳年収の目安は900-1,000万円。人気の高いメガバンクは競争過多のためお勧めしない。また、運よく外銀や戦略コンサルに入れたとしても、待っているのは激務と私大差別だ。


【東大、京大】
 財閥系不動産デベロッパーか総合商社をお勧めしたい。過去の遺産で食っている前者は特にお勧めだが、採用員数が少ないので一応、総合商社も入れてみた。外銀や戦略コンサルはお勧めしない。なぜなら儲けの源泉が人的資本だから、必然的に想像を絶する激務に身を投じることになる。官僚も経済合理性からはお勧めしないが、日本を想う高い志があるならどうぞご自由に。

2017年6月15日木曜日

北米リテールはなぜ ”今” 苦しみだしたのか

 アマゾンが北米で実店舗を大量閉鎖に追い込んでいる。私の保有銘柄であるフットロッカーとヘインズブランズは、ともにアマゾンに対する耐性を有していると考えているものの、株価は完全にアマゾンリスクに怯えて冴えない展開となっており、株主としてもアマゾン問題を軽視することは出来ない。

 多くのリテール企業、アパレル企業がここ最近苦しんでいるのを目の当たりにして思うのは、なぜ”今”それが起きているのか、ということだ。アマゾンが急成長しているのは今に始まったことではない。次の表を見るといい。

 もうずっとずっと前から、アマゾンはこの通り信じられない速度で売上を伸ばしてきたではないか。
 しかし、答えは案外簡単なところにあるのかもしれない。上記の数値表に、前年度売上増加"率"だけではなく、増加"額"を入れてみよう。

 増加額の部分だけをグラフにしてみる。

  こうすると、なぜ”今”なのかがはっきりする。売上成長率では見えなかったが、額にするとまさに今、アマゾンは過去最も急速に成長している。2015年度から前年対比の売上増加額は100億ドルの大台を突破し、2016年度に至っては160億ドルも増加している。2015年度の増加額130億ドルと合わせると、2年間で290億ドルの増加となる。
 参考までに、日本が(規模で)誇るイオンの小売事業における直近年度売上高は600億ドルだ。
 売上の絶対額ではなく、アマゾンはあくまで”増加額”だけでこのような圧倒的な数値を叩き出しているのだが、もちろんこれは北米の小売業にとって純増、というわけではない。この間、アメリカの名目GDPは3,4%の成長率にとどまっており、アマゾンの売上成長率25%と比較すると慎ましいものだ。北米GDPの7割は個人消費によるものなので、全体のGDPが3,4%しか増えていないということは、個人消費の絶対額も同じ程度しか増えていないはずだ。
 すなわち、イオンの小売事業売上のおよそ半分に相当するシェアが、この2年間で他の小売事業者からアマゾンに移ったという理解ができる。


 こんな事実を目の当たりにして、我が保有銘柄にとっては取るに足らぬと笑い飛ばすことは到底できない。何となく結論が見えてきたかもしれないが、私は小売関連株を保有したままアマゾン株も取得することとした。2年前に当社を分析した際には「私がアマゾン株を購入することは有り得ないだろう」とまで言っていたのに、随分な変節である。しかし特に恥とも思わないばかりか、こうなったら後付け財務分析により当社がバリュエーションの観点からも購入に値すると言い張ってやるつもりですらある。

2017年6月11日日曜日

家計の暗黒時代

 実を言うとこの4月で課長となったのだが、多くの企業においてそうであるように、直前の係長時代より額面年収は微減、という事態となっている。理由はもちろん、管理職になって残業代が支給されなくなるためだ。
 今後の昇給ペースを完全に把握しているわけではないものの、執行役員クラスになるまでは年率5%程度の昇給カーブとなるはずだ。OK、物足りないが悪くはない。会社員とはそういうものだ。
 こんな感じで、息子二人に一番金がかかる15年後の年収を皮算用したりしているのだが、年収増加分の内、いくらが手元に残るのかについて少しでも考えてみると、陰鬱な気分になるしかないシミュレーションが導き出される。
 支出だ。支出が増えるのだ。

 私は服に金をかけたり、流行りのガジェットにもそこそこ手を出したりと、決して倹約家と言える方ではないが、地道な固定費削減が功を奏して給料がそれほど変わらない同僚などと比較しても貯蓄ペースはかなり速い方だ。だから教育費の増加なども難なく乗り越えられるだろうと特に深く考えもせず楽観的に構えていたのだが、真面目に計算するととても難なく乗り越えられなさそうなのだ。
 息子二人が幼稚園児と乳児である現状の支出と、その二人が私立理系大学に進学した場合の支出シミュレーションを示すとこうなる。


 現状17万円/月の支出が、15年後には66万円/月になる可能性がある。49万円/月の増で、現状の4倍!
 最も大きな増加要因は言うまでもなく学費で、いくつかの私立大学を調べてみたら、今だと年間170万円前後のようだったので、上記はそれを参考にしている。次に大きいのが会社からの住宅補助支給期限が切れること。これも非常に痛い。
 しかも恐ろしいことに、このシミュレーションにはまだ楽観的な部分が残っている。大学授業料は、過去一貫してインフレ率をはるかに上回る上昇を見せてきたのだ。

出所:ガベージニュース

 どう考えても、15年後の学費が今と同水準であろうはずがない。他にも息子二人が通学のために一人暮らしをしようものなら更に10数万円の支出増。所得税率や健康保険料も確実に増加する。
 一体全体、世の中の皆さんはどうやって破産せずに子供を大学に通わせるのだろうか。思えば私も二人兄弟で、二人とも一人暮らしをさせてもらっていた。両親よ、今さらながらありがとうと、心のこもらない謝辞をここで述べておく。

 このように、子供に一番金のかかる時期に収支を均衡させようというのは並大抵のことではないので、貯蓄は計画的に行いましょうね。

2017年6月5日月曜日

とある大学投資サークルの1日

<登場人物紹介>
 石黒 : 部長。意識高い。
 佐藤 : サークル幹事。意識高い。
 三戸 : サークルの姫。意識高い。


石黒「よく集まってくれた。今月の購入銘柄について議論を深めたいと思う。まずは各自、注目銘柄を挙げてほしい。」

佐藤「ドラッグストア・チェーンのサンワ堂を推奨したいと思います。データを見てください」

三戸「なにこれ。ここ数年、EPSが全然成長していないじゃない。しかも今時ブリック・アンド・モルタルなんてEコマース化の時流に逆行するし、あまり魅力的とは思えないけど…」

佐藤「そうですね。サンワ堂は数年前に大量出店とM&Aを駆使して地元のドミナント化が完了して以降、新規出店はほぼ止まっています。ですが三戸さん、サンワ堂の店舗は賃貸じゃなくて自社保有物件なんですよ。」

三戸「それがどうかしたの? 店舗の自社保有はむしろ悪手ではないかしら。投下資本の肥大化でROICが低下しちゃうし。」

佐藤「ノンノン、RIMではなく、DCFに注目ですよ。過去の大量出店でサンワ堂の償却費はNOPATの6割に達しています。一方、新規出店がないのでCAPEXはほぼゼロ。これが何を意味するか。」

石黒「見た目のPERは平凡だが、FCFベースの益回りは非常に魅力的だということか。」

佐藤「ご名答。償却費を控除したNon-GAAPベースのPERはたった6倍なんです。」

三戸「ホントだ。EBITDA倍率も4倍しかない。グッドウィルはアモタイズしているの?」

佐藤「IFRS適用だからしてませんが、グッドウィルと同等のインタンジブルが認識されていて、それを5年で規則償却しています。あと1年で償却が終わります。そして買収した企業のシナジー効果でSG&Aも年々切り下がってきています。WACCを保守的に見積り、永久成長率を1%と低く設定したターミナルバリューを前提としても、僕のCAPMによれば300%の株価上昇余地があります。今のポートフォリオってグロース株が多いじゃないですか。これからはこういうマチュアな銘柄を増やしていくと、シャープレシオが改善して効率的フロンティアに近づくと思うんですよ。サンワ堂の5年ヒストリカルベータは、見た目の財務体質が急激に悪化した出店攻勢中の期間が含まれているので高めに出ていますが、その期間でさえアンレバード化すると一貫して低いんです。実際、新規出店が止まってからの2年ヒストリカルベータは顕著に低下しています。」

石黒「いいね。サンワ堂を購入の筆頭候補に加えよう。三戸さんの推奨銘柄を聞かせてくれるかな。」

三戸「テンポラリサービス・グループホールディングスです。長いので以下、TSGHとしますね。同社のCEOはシリアルアントレプレナーの疋田さん。もちろんご存じだと思いますけど、Twitterフォロワー数が60万人もいる財界屈指のインフルエンサーです。MITのMBA持ちで、財務デューデリの専門家。20代で銀行傘下のインキュベーションファンドを立ち上げた後は、自己資金で3社のベンチャー設立に参画していて、全てIPOまでこぎつけています。顔も資産も学歴も文句なし。バリキャリ女子の間では抱かれるなら疋田さんって、SPA!特集に書いてありました。」

佐藤「ちょっとちょっと。かなり熱が入っているようだけど、CEO頼りの投資っていうんなら感心しないな。そういうのって、優位性がサステイナブルか検証不能だろ。」

石黒「佐藤くんの言うとおり、僕らはサークル会費の運営に対してフィデューシャリー・デューティーを負っていることを肝に銘じなければならない。SPA!特集がどうとかなんて、投資とは何の関係もない話だろう。それに疋田CEOが立ち上げたベンチャーのうちの1社は、マスキング価格とSPCを利用した不正会計で財務体質が壊滅的なことが判明し、ゴーイングコンサーンに疑義のある状態だったと記憶しているよ。確かガーゴイル・エンターテインメントだったっけ。」

三戸「男の嫉妬はみっともないですよ、お二人とも。ガーゴイルの業績悪化と不正会計は疋田さんが経営から抜けた後のことです。それにもちろん、TSGHは疋田さん抜きでも魅力に溢れた投資対象だと考えています。TSGHは自動車のセカンダリー・マーケットにおけるプラットフォーマーで、主要顧客は中古車ディーラー。幅広いネットワークと透明性のある価格設定で、ネットワークが弱い中小ディーラーの間で同社プラットフォームの"仲介くん"はデファクト・スタンダードとなっています。」

石黒「B/Sに資産はほとんどなく、ROAは上場以来3年連続で30%超か。素晴らしい実績だが、トラックレコードが短いから定性的な面からも確認が必要だね。リセッション・プルーフに関する見解を聞かせてほしい。」

三戸「"仲介くん"はサブスクリプションモデルを採用していますから、中古車市場が冷え込んでも一定のフィーが得られる仕組みです。もちろん会員の中古車ディーラーは1年毎の契約更新時に解約料なしに脱退できますが、"仲介くん"と同等以上のサービスを提供している競合は皆無ですし、ネットワーク効果を考えると今後も出てくる可能性は低いでしょう。つまりモートはワイドってことです。」

佐藤「TSGHの筆頭株主が疋田CEOなのはいいとして、その保有株が非上場で議決権が普通株の10倍あるクラスB株というのが気になるな。こう言っちゃなんだけど、たかだか中古車仲介業の会社にシリコンバレー企業みたいな議決権傾斜が必要とは思えない。コーポレートガバナンスに懸念が残るね。」

三戸「文句ばっかり。」

石黒「まあ、佐藤くんはグロース株一辺倒のポートフォリオを見直したいみたいだから。TSGHの購入検討にはもう少し時間をくれないか。」

三戸「異議なし。」

佐藤「それじゃ、インスタのサークル公式アカウントに今日の報告をアップするんで、3人で写真撮りましょう。セルフィー棒は、と。あったあった。はい、チーズ! んじゃ、スタバにでも寄って帰りますか。」

石黒「俺は三戸さんと用事があるから。」

佐藤「え、二人とも付き合ってんの?」

三戸「なになに、知らなかったの? 超ウケる。」

石黒「投資サークルなのにアンテナ低すぎなんじゃないか。他のサークル員同士もみんな付き合ってるぞ。もちろん知ってると思うけど。」

佐藤「いや、知らないし…」

三戸「まあどうでもいいや。それじゃ、お先にー。」

石黒「お先。」

佐藤「どうもでーす…」

(続く、かもしれない)

2017年6月1日木曜日

マイ・ポートフォリオ(2017年5月末)

年初来リターン (円換算・税・配当込み) +2.9%
投資元本 27.1百万円

一部売却:ワールドホールディングス (2429)
追加購入:Foot Locker (FL)
新規購入:シノケングループ (8909)、Wyndham Worldwide (WYN)、International Flavors & Fragrances (IFF)

 細かな売買はあったものの、どれも微調整レベルで全体に与える影響はほぼない。
 International Flavors & Fragrancesは前からずっと狙っていた銘柄で、決算発表で6%程度株価が下落したところを少しだけ拾った。フレーバー&フレグランス事業は将来性、不況耐性、参入障壁の高さから途方もなく魅力的なのだが、P&Gなどと同じカテゴリーの生活必需品株扱いされているのか、株価水準が常に高い。あくまでマーキングのための購入であり、よほどの暴落がない限りポートフォリオの主力に躍り出てくることはないだろう。
 Wyndham Worldwideはホテルチェーン。ホテル、とはいうものの、収益はバケーション・オーナーシップ事業(またの名をタイムシェア事業)に寄りかかっており、日本株で言うとリゾートトラストと同じビジネスだ。収益の大半がフィーによるもので、利益が非常に安定しつつ規則正しく成長している。タイムシェア事業についてはいずれ記事にしたいと考えている。
 今後、興味の幅を拡げることを目的に少額保有銘柄の増加が予想されるため、全体に占める割合が1%未満の銘柄は一つにまとめて表記することとした。

<保有比率1%未満の銘柄群 内訳>
シノケングループ(8909)、Wyndham Worldwide(WYN)、International Flavors & Fragrances(IFF)


 それにしても日本の小型株の好調さは凄まじく、個人投資家の嬉しい悲鳴が聞こえてこんばかりだ。私の銘柄も御多分に漏れず上げているが、全体に占める割合が小さいため、円高やFoot Lockerの暴落に全く打ち勝つことができていない。

2017年5月26日金曜日

伝染する敏感さ -フット・ロッカーQ1決算-

 退屈かもしれないけれど、基本的な確認事項から始めてみよう。
 フット・ロッカー(FL)は北米・欧州を中心に3,354店舗を展開する世界最大の運動靴販売チェーンだ。熱狂的なスニーカー・フリークからすると「違う、一緒にするな」と言われそうだが(もちろんフット・ロッカーの方が格上という意味)、ナイキとの結びつきが極めて強く、同ブランドの売上がかなりの比率を占めることを除いて、投資家的にはまあABCマートみたいな存在だと思ってもらえれば事業的には大差ない。
 業績もABCマートに輪をかけて素晴らしく、毎年2桁のEPS成長を長年継続している。そして何より重要なことに、足元の実績PERは13倍程度に過ぎない。

 そんなフット・ロッカーが今週、2017年Q1決算(2-4月期)発表を行った。
 コンセンサス予想に対してEPSで1.4%、売上で1%だけコンセンサスを下振れた。ついでに言うと、リテール企業で最も重要なKPIとされている既存店売上高は、1.4%増加を見込まれていたところ0.5%の増加にとどまった。なるほど、確かに失望的かもしれない。

 そしてこれが引き起こした株価変動はいかほどだったか。
 マイナス16%がその答えだ。
 市場はなぜこのようなリアクションを取り、何をディスカウントしているのだろうか。

 当ブログでも何度か言及している通り、北米小売業は過去2年、悲惨な業績を辿ってきた。百貨店、ディスカウントチェーン、アパレルブランドなどの既存店売上高が、破壊者アマゾンによってマイナス2桁というのが特に珍しくもない光景となっているのだから、文字通り壊滅的と言うしかない。
 そんな中、フットロッカーは小売業者の中では数少ない成長企業であり続けた。それがたった1四半期、売上・利益が横ばいになっただけでマイナス16%の暴落。2-4月期の既存店売上高が小幅な増加にとどまったのは、米国の税還付が遅れて2月の売上に大きなマイナス影響を及ぼしたためで、3,4月は1桁台中盤の売上成長に戻っているとの説明が経営陣よりあった(スニーカーの主要な購入層であるティーンたちは、親の財布事情に購入タイミングを左右される。昨年はこの時期に還付されていた税が今年は還付されず、ティーンのスニーカー購入にゴーサインを出さなかったというわけだ)。同時に、スローダウンはサイクルではなく、あくまで一時的な要因だと強調していた。投資家はこれを完全な言い訳とみなした。むろん私も無条件で信じようとは思わない。税還付スケジュールの遅れで売上に影響が出たのは当四半期最初の2月であり、その後3,4月の2ヵ月でも完全にその売上減を挽回しきれなかったというのは、果たして本当かと思わざるを得ない。

 しかしもう一度思い出そう。フット・ロッカーはついこの前までオンラインショッピングの脅威に耐性を見せ、順調に成長を続けていた上、予想PERは10.5倍、なのだ。まともな環境であれば、この程度のつまずきが極端な暴落を誘発するはずがない。

 投資家は伝染性の疑心暗鬼に感染している。シアーズが、メーシーズが、JCペニーが、ターゲットが、ダラーツリーが、ヘインズブランズが、ラルフローレンが、その他数々の小売企業、アパレル企業が目に見えてアマゾンの餌食にされているのをたっぷり見せつけられて、フット・ロッカーよ遂にお前もかと、そういう気持ちになってしまったのだ。そしてまた次の四半期に絶望的な知らせが届けられることを心配して、我先に株を売り払った。今回の暴落の背景は、多分この程度のことだろう。
 もちろん、本当に何らかの変調がフット・ロッカーにも訪れた可能性はある。私は長らくフット・ロッカーを数値面で観察し続けてきているので、感覚的にQ1の減速は心配に及ばないと高をくくっている。今、一部の小売企業を襲っている株価低迷は、相次ぐ訴訟を恐れて絶望的なほど叩き売られていた21世紀初頭のたばこ会社を彷彿とさせる。たばこ会社は強く、訴訟リスクにより押さえつけられた株価はその後、投資家に莫大なリターンをもたらした。アマゾンリスクにより他の弱い小売企業と一緒になって株価が押さえつけられているごく少数の強力な小売企業は、この後、たばこ会社と同様に素晴らしいリターンをもたらすだろう。フット・ロッカーはそういう企業の一つだと私は思っている。
 根拠はない。

 で、買い増すのか。多分ボーナスの一部はつぎ込むことになる。他にも欲しい銘柄が出てきているので、それらと一緒に少しずつ買い増すだろう。Q3決算発表までは、何となく株価は復調しない気がするので、急ぐ必要もなさそうだ。