中二病でも投資がしたい
”なんと悲しいことだ。あなたに見えるものが、わたしには見えない”『アホでも稼げる「米国株」高配当投資』 第32章
朽ち果てたブラックロック宮殿の地下深くには聖杯が眠っていて、それを手にした者には永遠の富がもたらされるという。
富? 生命じゃなくて? とシィータが聞いた。
「そうさ。聖杯からは少しずつ富が溢れだしてくる。眠っている間もずっと。それがどんな形をしているのかは誰も知らないけどね。」
金貨の形かしら。シィータの問いかけに、僕は「知らないよ。」と冷たく返した。形なんてどうだっていいじゃないか。もっとも噂によると、富はフィーフォーサービスだかリカーリングレベニューだかの小難しい名前が付けられた概念として付与されるらしい。はっきりしているのは、身寄りのない僕らには生きるためにもそれが必要だってことだ。
途中で立ち寄ったドルコスト村を出発してから四時間は歩き続けただろうか。すっかり日が暮れてしまい、オークツリー街道は真っ暗で十メートル先も視認できない有様だった。痛っ、とシィータが言った。大きな石に躓いたみたいだわ、こんな暗い道を歩くなんて正気とは思えない、今日はもう休みましょうよ、ああ、暖かい粉末緑茶が飲みたい。「そうだね。粉末緑茶は振る舞えないけど、休むことは出来る。」 そうこなくっちゃ。「ほら、寝袋だよ。」 よほど疲れていたのか、シィータは袋に包まると目を瞑って一言も喋らなくなった。
幼さの残るシィータの顔を見つめながら、僕はこれまでの旅路を思い出していた。子供二人にとっては決して楽な行程ではなかった。いや、大変な苦難だったと言っても異論を唱える者はいないだろう。しかし僕らはやり遂げた。数々の試練を乗り越え、長老に聖杯を手にする権利を授けられたのだ。その証であるボリンジャーバンドがシィータと僕の右腕に誇らしげに輝いている。そして、嗚呼、ブラックロック宮殿はもう目と鼻の先にある。
その時、見ていた方角がほんのり明るくなって、建物-ブラックロック宮殿に違いない-のてっぺんから光が拡がるのが見えた。人工的な純白の光線が周囲を照らし、まるで宇宙が誕生する瞬間のようだった。
「シィータ、あれをご覧。」
ゆっくりと目を開けて寝袋から這い出ると、綺麗、とシィータが言った。その瞬間、光線は矢のように一直線になった。
「エリオット波動!」 僕はシィータの頭を抱えて伏せた。あれは神の怒りの代弁で、触れたものを跡形もなく焼き尽くす。光線の矢の先端は四時間前に出発したドルコスト村を向いていた。やがて光がおさまって、再び闇が訪れた。
兄さん、今のはなに、とシィータが聞いた。「エリオット波動さ。」僕は答えた。
「光線の先にあったのは、ドルコスト村だったと思う。」 シィータはその意味を理解してへたりと座り込んだ。
「そんな、村のフィナンシャルプランナーさんたちはみんな優しくしてくれた。みんなみんな優しい人ばかりだったのに、ひどい…こんなのってない!」
「きっと、名前が良くなかったんだ…村の。それ以外考えられない。神の怒りなんて、無縁の人ばかりだった。」
僕の目からは一筋の涙がこぼれていた。シィータはすすり泣いていた。僕らは静かに抱き合った。悲しみを癒すためからではなかった。過酷な世界で虫けらのように死んでいかないためにも、必ず聖杯を手に入れなければならない、その覚悟を無言で確認したのだった。僕らの戦いは、まだ始まったばかりだ。
冒頭画像
『人類遺産』ニコラウス・ゲイハルター
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惜しい。タイトル(の元ネタの知名度)が弱い。
返信削除投資が人気ないのはどう考えてもお前らが悪いって感じ。(見てない)
内容がちょうど中二が書きそうな感じだったのでこれにしてみました。元ネタを視聴したことはありません。
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