[ 銘柄分析 ] グーグル (GOOGL)

グーグルの業績にも投資家にとって有益な情報がたくさん詰まっている。
必ずしも、素晴らしいというものばかりではないが。

次のグラフをご覧いただきたい。


赤い線のEPSは着実に伸び続けている。05年度から14年度まで、年率にして27%の伸び率だ。
しかし、青い線のROEは一貫して低下し続けている。直近年度では15%程度と、もはや米国平均と大差ない。

グーグルは2004年の上場以来、着実に利益を増やし続けてきた一方、自社株買いと配当を一度も行っておらず、自己資本も膨らみ続けてきた。
潜在的なROE水準があまりにも高すぎるため、利益の伸びが自己資本の伸びに追いつかず、このような現象が起きている。
日本で高収益と崇められるような一部の企業でも見られる、お馴染みの光景ではある。

利益によって獲得してきた自己資本の一部は、おびただしい数の企業買収に使われた。だが、自己資本の積み上がる速度は凄まじく、全てを使い切ることは到底不可能だった。
結果として、当社は大量の現金同等物を抱えている。
(自己資本 11年末:58billion → 14年末:104billion
 現預金 & 短期投資有価証券 11年末:44billion → 14年末:64billion
 64billionは、1株当たり$93に相当する。株価は現在$500台中盤だ)

さて、企業買収の成否については現時点で誰も判断できない。
が、今も昔もGoogleの利益の源泉は検索連動広告のみと言って過言でなく、過去の企業買収は現在の利益に全く貢献していない。YouTubeですら未だ赤字事業だ。モトローラ・モビリティなど、疑問符のつく買収もかなり多い。
とりあえず、私はこれらを無駄な買収と断ずる。
無駄な買収、使い道のない現預金残高。
以上の点から、グーグルの資本政策は一般的な投資家にとって完全に二流企業のそれと言える。

にもかかわらず、完璧な検索広告ビジネスはそれらマイナス要素を打ち消し、投資家に利益をもたらした。
グーグルの収益は有史以来、誰もがなし得なかったスピードで増加し、2004年の上場時に株を買った投資家は市場平均を遥かに上回るリターンを獲得した。

だとしたら、ROEの低下など取るに足らないのではないかという人もいる。
そういう人に対して、随分とお優しいのですね、と私は思う。
グーグルが投資家にとってリターンの面で優等生だったことは事実だが、無駄な資金を適切に株主に還元していれば、超優等生となれたのだ。「超」となる選択肢があったのにそれを選ばなかったグーグルに、無条件の称賛は値しない。

ところで、文句を言いつつも私は何故グーグルを買うのか。

まず、予想PERが20倍程度と、成長が鈍化したとはいえまだ数年にわたって2桁台のEPS成長が確実視される企業の水準としては十分に割安だと感じていること。
そしてもう一つの理由は、珍しくも資本政策の転換に対する期待値込みとなっている。

自己資本が過大になり成長も鈍化してきたため、このままでは当社のROEの更なる低下は必至だ。高ROE企業の宝庫であるテクノロジー・セクターの中でも一際眩い存在感を放つ"あの"グーグルが、何と米国平均を下回るROEに甘んじるなどという事態は、先端企業イメージを維持するためにも許されない・許さないと考えている。
そして当社がROEを改善する方策はとても簡単だ。現預金を配当すればよい。
グーグルの企業価値の本質は保有する現預金とは全く関係ないため、理論的には株価下落を引き起こさずに、配当だけがなされる。
(実際には特別配当決定後に配当額相当の株価上昇があり、配当後に上昇分だけ株価が落ちる)

ま、こういうことを皮算用ともいう。

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