株主優待との付き合い方

 事業によって得た利益を持分に応じて株主に分配するという株式会社の本則に照らせば、株主間で受益に不公平が生じる株主優待は、言うまでもなく邪道だ。
 株主数を増やそうという意図のもと、「期末時点で100株保有株主にクオ・カード1,000円を進呈!」などという内容がやたらと目につくが、これは200株以上の株主から100株株主へ利益が移転することを意味している。優待にかかる費用は税務上の損金不算入となるので、クオ・カード進呈には節税効果すらなく当期利益が悪化する。実にけしからん。

 しかし、私は苛立ちを覚えつつ、株主優待銘柄にいそいそと参加する。小口株主が優遇されるのであれば、私自身が小口株主となればよいのだという当然の結論に従って。
 いくら正義感に燃えて「おかしい!」と触れ回ったところで、日本における株主優待ブームは終わる兆しなどない。ならば、もはや重力に身を任せよう。
 そうして私はゲーム理論の一参加者となり、囚人のジレンマに加担する。


 日々の生活に密着した事柄にも、こうした不合理は溢れている。声高に全体最適を訴えても、改善は不可能だ。
 損得にうるさい投資家ならばつべこべ言わず、他者を出し抜いて利益を享受する側に回った方がいい。


●ふるさと納税
 自治体別では税収増。しかし日本全体では住民税の移動が起こっているだけで、御礼品にかかった費用だけ税金の無駄遣い。
 結果、ふるさと納税を行わない人から行う人へ、御礼品相当額の利益移転が起こる。
 (納税者全体にとっての最適解は、ふるさと納税に参加しないこと)

●クレジット・カード決済
 カード決済すると、支払額のおよそ5%程度がカード会社に吸い取られる。内、1%程度はポイントとしてカード利用者に還付される。
 店舗側はカード会社に吸い取られたマージンを販売価格に乗せ、消費者に負担を転嫁する。
 結果、現金で支払う人からカードで支払う人へ、ポイント相当額の利益移転が起こる。
 (消費者全体にとっての金銭的な最適解は、カード決済をしないこと)

●通信キャリアの販売奨励金
 ドコモなどの通信キャリアは、契約者を増やすために端末価格の一部を販売奨励金という名目で肩代わりし、それを通信料金に転嫁している。iPhoneの販売奨励金は他の端末に比べて特に高額だ。
 結果、中国メーカー製の廉価スマホを長期間使うユーザーから、iPhoneを頻繁に買い替えるユーザーへ利益移転が起こる。

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