カード会社シンクロニー・ファイナンシャル(SYF)のビジネスを解く


 18年Q4決算発表とともに+10%吹き上がったシンクロニー・ファイナンシャル。
 決算が市場の期待を上回る数値だったことに加え、ウォルマートとのいざこざが決着し、同社グループであるサムズクラブとのパートナーシップが延長されることになったのが影響した。

 SYFのビジネスモデルはとてつもなくシンプルだ。
 リテール企業が発行するカードの決済関連業務を一手に引き受ける。ビザやマスターカードのように決済のトランザクションを担い、消費者の分割払いに対する貸し付けも行う。クローズドな環境で決済から融資まで行うという点ではアメリカン・エキスプレスと同じカテゴリーに属するとも言えるが、一連の取引の中で収益的に圧倒的な存在感を誇るのは、決済のトランザクション・フィーではなく、貸付から得られる金利である。
 バランスシートを見れば、当社が完全な消費者金融会社であることが一目瞭然となる。

シンクロニー・ファイナンシャル
18Q4時点のバランスシート


子会社のシンクロニー・バンクから調達したコスト2-3%の預金(黄色セル)を原資に、ウォルマートやロウズなどのリテール・パートナーのカード利用者に20%を超える高利で貸し付けている。

 ウェルズ・ファーゴあたりの商業銀行では「貸付利息ー調達利息」である純金利マージンが常に注目される指標となっているが、それはコーポレートファイナンスや住宅ローンから得られる純金利マージンが2-3%に過ぎないからであり、この利ザヤはイールドカーブの立ち具合に大きく左右される。言い換えれば商業銀行は金利敏感型のビジネスを営んでいる。
 一方、シンクロニー・ファイナンシャルのような消費者金融にとっては、イールドカーブがフラット化しようとスティープ化しようと、事業への直接的な影響は少ない。そんなものを真面目に注視するのがバカバカしくなるほどの高利を得ているからだ。

 カスタマーベースが順調に推移していることを大前提とした上で最も重要な指標はデフォルト率である。バランスシート上でいうと、貸倒引当金への繰り入れがじりじり増えていないか。また現時点で計上されている貸倒引当金を上回るデフォルトが連鎖的に発生する状況にないか。注意すべきはこの点だ。
 仮に金融危機や大不況が起こって、当社の貸付金$89Bの1/3がデフォルトする場合、$30Bの取りはぐれが生じることになるが、それに対して引当金は$6Bしか計上されていない。差額の$24Bについてはデフォルトした期にP/L上で損失が計上される。SYFの株主資本は14Bしかないので、このような事態が起これば一気に債務超過へ転落してしまう。

 カード利用者がリボ払いを踏み倒すことが連鎖的に起きるのか起きないのか。起きないのなら、順調に事業を拡大する一方で、株価急騰後でもPER7倍に据え置かれている当社への投資は実を結ぶことになるだろう。


冒頭画像
『女と男のいる舗道』ジャン=リュック・ゴダール

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