ブラックロックに立ち込める暗雲


 本日、ブラックロック(BLK)の18年Q4決算が公表された。内容は心躍るものではなかった。ただ、このような事態は2018年Q2,Q3決算から想定できたので、当ブログであれだけ祀り上げたBLKではあるが、私はもう売却している。
 決算内容に触れよう。ETFへの資金流入(Net Inflows)は続いたものの、年末の株価下落による時価減少でAUM(運用資産残高)が前年対比、直近四半期対比ともに減少したし、AUMに課金される売上も連動して減った。多少の株価の下落があろうとも(2016年のチャイナショックの時でさえ!)、時価下落を資金流入が上回り元気にAUMを増やしてきたのが遠い昔のようだ。ETFブームというのもどうやら一服してきたとみられる。
 また他にも気がかりなことがある。2017年後半から2018年前半にかけて落ち着きを見せていた経費率の値下げ影響が再び牙を剥き始めているのだ。それはAUMと売上高の増減率の差によって確認できる。
 2018年Q4のAUMは前年同期比で-5.0%となった。それに対し、売上高は-8.8%だった。ETFによって経費率には差があるためAUMの構成によっても売上高は影響を受けるのだが、基本的に経費率が同じであれば、売上増減率とAUM増減率は概ね一致するはずだ。そうならず、売上減少率がAUM減少率を上回っているということは、経費率がそのスプレッド分だけ下がっていることを示唆している。


 上図はAUMと売上高の対前年増減率を棒グラフで、そのスプレッドを折れ線グラフで表したものだ。折れ線に目をやると、2017年後半から2018年前半(私がBLKを初めて購入した時期でもある)に±0付近に持ち直したスプレッドが、2018年Q3,Q4と再びマイナスに転じているのが分かる。ETFへの資金流入が急拡大していた2016年度は、経費率の値下げがあってもそれを上回るAUM増加によって増収を確保していた。
 資産運用業界にあっては常態化している値下げ競争が今になって不安の種になっているのは、ETFへのインフローが減速しているからに他ならない。安売りしても商品が売れないという事態が定着すれば、悲劇というしかない。
 バンガードは強力なライバルではあるが、利益を追求しない共済みたいな組織なので、経費率に関して言えばAUM増加による資産単位当たりの固定費減少分しか値下げしてこないため、無限の競争にはなり得ない。むしろ心配なのはフィデリティのような老舗が経費率ゼロの投信を市場投入してきたところにある。T.ロウあたりなども追随してきたら、今までは鈍重なアクティブファンドと半ば存在を無視していたような相手とも同じ土俵で戦う羽目になりかねず、何となく気が重くなるではないか。


 もっとも、このようなことはたっぷり下がった株価に既に織り込まれていると思われる。実際、減収減益にもかかわらずこの記事を書いている日本時間深夜時点では決算を受けて株価が大きく上昇している。どうやら市場の想定よりはましだったらしい。なるほどBLKの予想PERは14倍程度でしかない。誰も当社を成長企業などとはみなしていないというわけだ。
 しかし業績から中長期的な懸念を抱かせる割安巨大企業についてはIBMで懲りているので、コンセンサスに対する短期的な変動を私は無視する。業績に明るい兆しが見えない限り、再度購入することはないだろう。

[ 気になるニュース ]
ブラックロックが世界で500人削減、全体の3%-不透明感強まる中で
bloombergより


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『キッスで殺せ』 ロバート・アルドリッチ

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