さようなら、ネットフリックス

 


 2018年後半におけるハイテク株急落からネットフリックス株の株価戻りが早いという。

ネットフリックス株が続伸、FAANG銘柄で際立つ回復ぶり

www.bloomberg.co.jp/news/articles/2019-01-06/PKXKKE6S972F01

 ん、何か違うな。
 ああ、そうそう。
今日は株の話ではなかった。私が契約者としてネットフリックスへ一時的に別れを告げなければならない局面がやってきた、そういう話だ。

 私はネットフリックスが日本でサービスを開始した4ヶ月後の2016年1月に契約して以来、途切れることなく同サービスを使い続けている。初期のコンテンツラインナップは米国と比較すると極めて貧弱であったのだが(国ごとにライセンスが異なるため世界中で同じコンテンツが配信されているわけではない)、急速に拡充されることが期待されたし、実際に配信作品数は右肩上がりに増えてきた。映画狂とはいっても
や週に1,2本を鑑賞する程度のペースに落ちてきており、最新作がなかなか配信されないことはそれほどデメリットに感じなかった。また、オリジナルコンテンツにもかなり質の高い作品が時折生まれ、夢中になって鑑賞した。(特に人気作『
ストレンジャー・シングス』の面白さはかなりのものだ。)
 全体的に、私は満足していた。


 しかし2018年に入ると、観たい作品を保存しておく「マイリスト」が目に見えて痩せ細っていった。体感ではサードパーティのコンテンツ拡充が失速しているというか、むしろ配信停止の数が上回って全体の作品数が減っているような気がしてならなかった。
 どうやらその感覚は正しかったらしい。


出典:Netflix日本非公認ファンブログ(https://netflix-fan.jp)

 2018年に入り、海外映画と国内映画の配信数はともに綺麗な右肩下がりとなっており、代わりにオリジナルコンテンツが急増している。ネットフリックスにおいて明確な方針転換があったとみて間違いないだろう。そしてこの転換は、私にとって全く歓迎すべきものではなかった。不遜を承知で物申すと、オリジナルコンテンツの多くはウェル・メイドではあるものの、映画狂の瞳を十分に満足させてくれる水準に達しているとは言い難い、いわば暇つぶし専用といった程度のものだ。こちとら決算書を読んだり、ゲームをしたり、家事・育児をしたりと、あいにくそれほど暇ではない。

 そこで別れを告げる運びとなり、代わりのサービスとしてAmazonプライムビデオが選定された。
 プライムビデオの配信数はネットフリックスに輪をかけて貧弱ではあるが、何と言っても料金が安い。ネットフリックスを年間視聴すると15,552円(税込)かかるのに対し、プライム年会費は3,900円(税込)。子供が仮面ライダーなどキッズコンテンツを好きな時に観られるようにしておくだけの利用法でも、この価格なら十分と言える。そして元映画狂としての私を満足させるために、月額1,008円(年間12,096円)で4本の作品を借りられるツタヤディスカスを併用することにした。この組み合わせなら新作も観られるうえに、価格は年間15,996円とネットフリックスと同等に収まる。

 オリジナルコンテンツに力を入れて他社との差別化を図ろうとするネットフリックスの戦略は、企業として極めて妥当なものだと思う。動画配信は技術で差を付けようがないため、最終的には独自性あふれるコンテンツをいくつ抱えられるかが勝負の分かれ目になるのは火を見るより明らかだからだ。ディズニーが立ち上げる予定のストリーミングサービスも、基本的には自社コンテンツだけになるだろう。(だからこそ同社は買収によってラインナップ拡充を進め、独自の帝国を作り上げようとしている)
 そしてこの競争は、消費者にとって利便性を損なうものにならざるを得ない。一つのプラットフォームでア・ラ・カルト的に色々なスタジオの作品が観られたのは過去の話になり、縦割りとなったサービスを複数契約しなければならなくなるだろう。コストパフォーマンスでCATVを蹂躙したストリーミングサービスも、最終的な行先はCATVと同じ程度のコスパになってしまう。そんな気がしてならない。


画像『上海から来た女』オーソン・ウェルズ

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