到来近しと囁かれる不況。その復習


 昨年後半から米国市場は金融危機以来およそ10年ぶりの大きな株価下落に見舞われている。これまで一本調子に上げてきた反動に過ぎないのか、それとも不況入りを示唆しているのか。もしあなたがタイミング売買をするのなら、この判断は非常に重要となる。
 2018年12月末時点のS&P500 予想PERは17倍。株式益回りにして約6%。長期金利が上昇して3%に達していることを考慮しても、2%程度の実質GDP成長が続くと仮定するのならリスクプレミアムは5%程度確保されている(株式益回り6% + 成長率2% - 無リスク金利3%)と見られ、割安とまでは言えないまでも、まあ買っても悪くない水準と言える。
 一方、成長が滞ったり、ましてや悪化などしようものなら、PER17倍の買い物は中期的には高値掴みとなってしまうだろう。一部で到来が近いと囁かれる不況について、過去にどのようなものがあったのか改めて整理してみよう。

<1980年以降の不況>
1981年7月~1982年11月
石油危機の余波で発生。アメリカの失業率が10.8%に達し、1892年11月のGDPが年率換算2.7%減少した。

1990年7月~1991年3月
湾岸戦争に関連して発生。消費者やビジネス界の心理が冷え込んだと言われ、建設や製造の雇用が失われた。

2001年3月~2001年11月
俗にいうITバブル崩壊。ハイテク株を中心に株価暴落したが、FRBは金利を上げ続けた。さらに同年9.11テロが発生。

2007年12月~2009年6月
2007年のサブプライムローン危機が、リーマン・ブラザーズ破綻などを伴う金融危機に発展。



 およそ10年周期で大きな不況が発生している。教科書的には不況の発生メカニズムが投資循環からくる、すなわちプレートにエネルギーが蓄積して耐え切れなくなった時に暴発する地震と似たメカニズムであることを考えると、金融危機から10年を経た今、そろそろ不況入りするのかもしれないという想定は現実味を帯びているようにも思える。
 それでは仮に不況に突入したら、経済は一体どうなってしまうのだろう。ここで過去のデータを観察しよう。




 こうしてみると、不況といっても年率のGDP成長が横ばいかせいぜいマイナス2%程度が1年、長くて2年続くくらいのものであり、絶対額の推移をグラフ化するとますます取るに足らない出来事のように思えてくる。減損や時価評価損益などを通じて将来収益見通しに多分に依存する企業収益は、足元のGDP変動に対して大きく下方に動き、したがって株価もオーバーリアクトしがちであるが、不況が及ぼす影響は巨視的に見ればそう恐れるほどのものではないという鷹揚な構えが必要とされるのではなかろうか。

 では私はどうするか。もちろん常にフルベットなので選択の余地なく買い続ける。
 しかし、もし虎の子のまとまった資金が手元にあり、S&P500という指数全体に投じるか否かの判断を迫られているのなら、今は米国株指数への投資を見送るのもありかもしれない。冒頭にも述べたように現在の株価が割高だとは思わないものの、経済が順調に行った時に期待されるリターンと、不況に陥った時に喰らうであろう株価下落を天秤にかけると、後者のダメージの方が上回りそうだからである。微妙な指数のバリュエーションは、ストックピッキングで対処したいと個別株投資家は思っている。


冒頭画像
『吸血鬼ノスフェラトゥ』F・W・ムルナウ


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