金利上昇とハイテク株
IBMがハイテク株でない以上、あらゆるハイテク株はグロース株のはずだ。
ところで直近は戻してきているものの、ハイテク株は2018年度後半からの"調整"で格好の餌食になったのはご存知の通り。
要因は複数の説が囁かれている。ま、私にはどれが正解かわからないけど、はっきりしているのは「米国長期金利の上昇はハイテク株の株価にそれなりのダメージを与えた」ということだ。
株価あるいは時価総額は企業の将来収益を割引現在価値に置きなおしたものだ。成長著しいハイテク株は、せいぜい1年後の利益しか反映しないPERが高い値をつけていることからもわかる通り、高配当株を中心とする成熟企業と比べると、かなり先の利益に対する期待を多分に株価の中に抱え込んでいる。
さて、EPSもしくは税引き後利益を現在価値に割引く際に使用する割引率とは、一般的に株主の期待リターンだ。
期待リターン=無リスク金利 + リスクプレミアム
であるから、無リスク金利に相当する米国10年国債利回りの上昇はすなわち期待リターンを押し上げ、つまりは割引率を上昇させる。上昇した割引率はハイテク株のかなり先の未来の利益の現在価値を小さくし、株価に打撃を与える、そういう流れだ。
言葉ではインパクトが伝わりにくいだろうから、さっそくシミュレーションといこう。
まずは成長率に大きな違いのある2社を用意した。低成長株は生活必需品セクターあたりを、高成長株はIBM以外のハイテク株を思い浮かべながら読み進めてもらいたい。
シミュレーションは、低成長株と高成長株それぞれに1%と3%の異なる金利を適用して株価の変化を観察するというものだ。金利の変化がマーケットリスクプレミアムや企業業績に与える影響はないものと仮定する。
まずは1%の低金利下で両社のPERがどうなるか見てみよう。
高成長株の予想PERは50.6倍が適正と導き出された。成長率の違いはこれほどまでに株価評価に大きな影響を及ぼすのである。
次に同じ企業に金利3%を適用する。割引率は前提で示した通り、7%→9%になる。
総括に入ろう。金利上昇に伴う時価総額下落において、ターミナルバリュー(TV)が最も著しかった。実際のところ、高成長株においてはたとえ10%成長を継続しようとも1-10年目の利益など現在の株価にそれほど影響を与えていない。低金利状態のシミュレーションで確認すると、高成長株の時価総額5,000のうち4,000は4%の永久成長率が付与されている11年目以降の利益に支えられているのだから。
このように、グロース株投資家には、11年目以降の企業の成長率がある程度読めると豪語するだけの図太さが求められている。図太さがなければどうなるか。株価下落でビビッて惨めに遁走する羽目になる。
冒頭画像
『プレイタイム』ジャック・タチ
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