含み資産は無視すべし
あの企業の銀座の百貨店や丸の内の土地含み益○兆円、などと週刊ダイヤモンドや東洋経済あたりがたまに土地含み益特集を組んだりする。
そして、市場は定期的にそういう含み資産企業の株価を信じられないPER水準まで持ち上げる。
具体例を挙げると、昭和飛行機だとか、松屋だとか、三菱地所だとか、そういう銘柄だ。
しかし、含み益は不動産銘柄ブームが来る前から既に収益に反映されている。なので、そこから更に含み益分のバリュエーションを上乗せするのは間違っている。
そう、投資家は含み益の存在を気にする必要はない。少なくとも理論的には。
その根拠を示そう。
不動産であれ有価証券であれ、価格はその資産が生み出す将来キャッシュフローの割引き現在価値となっているはずだ。
冒頭の例で言うと、丸の内不動産の時価はオフィスビル賃貸料と直結している。
単純化するために仮定の数値でシミュレーションを行ってみる。
Xは都心に土地を保有しており、賃料を得ている。
B/Sは、資産側に不動産、負債・資本側に自己資本しかないこととする。
不動産簿価 : 100
不動産時価 : 1,000 (含み益900)
税引後年間賃貸料 : 100
税引後賃貸料単純利回りは "100/1,000"で 10%。妥当な線だ。
逆に言うと、市場は賃貸利回りが妥当なものとなるように土地価格を調整する。
その結果が 1,000 という時価になる。
でも、Xの土地簿価は100しかなく、含み益が900もある。
資産=自己資本という前提のため、自己資本100に対し、当期利益は100。ROEは100%となる。
これはROEの分子である利益に、含み益900の潜在力が加味された結果に他ならない。
Xの事業は当該土地の賃貸だけなので、PERは土地の賃貸利回りと等しくなる。即ち、株式益回り10%。PER換算で10倍。
するとXの時価総額は
当期利益100 × PER10倍 = 1,000
不動産時価と同じだ。
このように、Xの利益100には、既に含み益分の経済的利益が反映されている。
繰り返しになるが、Xの土地が含み益状態になっているのは、その土地が簿価と比較して高い収益を上げるからであり、その収益はP/Lを経由して株価に反映される。
ゆえに、投資家が目にしているPERは既に妥当なものであり、含み益の存在を根拠として更なる高PERを正当化することはできないのだ。
次にこんな反論があるかもしれない。
「使用していない休眠資産に含み益がある場合はどうするのだ。その場合は土地の価値が現在の利益に反映されていないのだから、高PERが正当化されるだろう」と。
しかしそれでもなお、答えは否だ。
再び不動産会社Xの例に戻ろう。
Xの保有土地(簿価100、時価1,000)が遊休状態になっているとする。
Xは時価1,000の土地を担保に銀行から安全に借入調達が出来る。税引後金利は1%としておこう。
そしてその資金を基に税引後利回り10%の不動産に投資する。
その場合、こういうP/L、B/Sになる。
【P/L】
売上 100
利息 10
利益 90
【B/S】
[資産側]
新規調達土地 1,000
遊休土地 100
[負債・資本側]
有利子負債 1,000
自己資本 100
総資産 1,100
さあ、いくつかの指標を見ていこう。
・自己資本比率 9% (自己資本100 / 総資産1,100)
・ROE 90% (利益90 / 自己資本100)
・時価総額 900 (PER10倍前提。利益90×PER10倍)
借入利息で利益が減った分、時価総額は遊休土地の時価1,000を割ることになったが、自己資本簿価100に対し、株価は900なので、PBRは9倍だ。遊休土地の含み益は十分株価に反映されていると言える。
本当に、使い道もなく、借入担保にもせず、含み資産を眠らせたままの企業はどうなるのかって?
そんな企業は放っておけ。決して手を出してはいけない。
ところで、含み益2兆円超と言われる三菱地所の実際のROEは、ふむふむ、たったの5%。
ふーん。
ん? いや、私の言ってることが間違っているわけじゃないと思うよ、たぶん。
そして、市場は定期的にそういう含み資産企業の株価を信じられないPER水準まで持ち上げる。
具体例を挙げると、昭和飛行機だとか、松屋だとか、三菱地所だとか、そういう銘柄だ。
しかし、含み益は不動産銘柄ブームが来る前から既に収益に反映されている。なので、そこから更に含み益分のバリュエーションを上乗せするのは間違っている。
そう、投資家は含み益の存在を気にする必要はない。少なくとも理論的には。
その根拠を示そう。
不動産であれ有価証券であれ、価格はその資産が生み出す将来キャッシュフローの割引き現在価値となっているはずだ。
冒頭の例で言うと、丸の内不動産の時価はオフィスビル賃貸料と直結している。
単純化するために仮定の数値でシミュレーションを行ってみる。
【含み資産企業の株価シミュレーション】
ここに不動産会社Xが存在する。Xは都心に土地を保有しており、賃料を得ている。
B/Sは、資産側に不動産、負債・資本側に自己資本しかないこととする。
不動産簿価 : 100
不動産時価 : 1,000 (含み益900)
税引後年間賃貸料 : 100
税引後賃貸料単純利回りは "100/1,000"で 10%。妥当な線だ。
逆に言うと、市場は賃貸利回りが妥当なものとなるように土地価格を調整する。
その結果が 1,000 という時価になる。
でも、Xの土地簿価は100しかなく、含み益が900もある。
資産=自己資本という前提のため、自己資本100に対し、当期利益は100。ROEは100%となる。
これはROEの分子である利益に、含み益900の潜在力が加味された結果に他ならない。
Xの事業は当該土地の賃貸だけなので、PERは土地の賃貸利回りと等しくなる。即ち、株式益回り10%。PER換算で10倍。
するとXの時価総額は
当期利益100 × PER10倍 = 1,000
不動産時価と同じだ。
このように、Xの利益100には、既に含み益分の経済的利益が反映されている。
繰り返しになるが、Xの土地が含み益状態になっているのは、その土地が簿価と比較して高い収益を上げるからであり、その収益はP/Lを経由して株価に反映される。
ゆえに、投資家が目にしているPERは既に妥当なものであり、含み益の存在を根拠として更なる高PERを正当化することはできないのだ。
次にこんな反論があるかもしれない。
「使用していない休眠資産に含み益がある場合はどうするのだ。その場合は土地の価値が現在の利益に反映されていないのだから、高PERが正当化されるだろう」と。
しかしそれでもなお、答えは否だ。
再び不動産会社Xの例に戻ろう。
Xの保有土地(簿価100、時価1,000)が遊休状態になっているとする。
Xは時価1,000の土地を担保に銀行から安全に借入調達が出来る。税引後金利は1%としておこう。
そしてその資金を基に税引後利回り10%の不動産に投資する。
その場合、こういうP/L、B/Sになる。
【P/L】
売上 100
利息 10
利益 90
【B/S】
[資産側]
新規調達土地 1,000
遊休土地 100
[負債・資本側]
有利子負債 1,000
自己資本 100
総資産 1,100
さあ、いくつかの指標を見ていこう。
・自己資本比率 9% (自己資本100 / 総資産1,100)
・ROE 90% (利益90 / 自己資本100)
・時価総額 900 (PER10倍前提。利益90×PER10倍)
借入利息で利益が減った分、時価総額は遊休土地の時価1,000を割ることになったが、自己資本簿価100に対し、株価は900なので、PBRは9倍だ。遊休土地の含み益は十分株価に反映されていると言える。
本当に、使い道もなく、借入担保にもせず、含み資産を眠らせたままの企業はどうなるのかって?
そんな企業は放っておけ。決して手を出してはいけない。
ところで、含み益2兆円超と言われる三菱地所の実際のROEは、ふむふむ、たったの5%。
ふーん。
ん? いや、私の言ってることが間違っているわけじゃないと思うよ、たぶん。
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