2015年5月23日土曜日

[ 銘柄分析 ] アマゾン・ドットコム (AMZN)

アマゾンの時価総額は15年5月現在、およそ2,000億ドル(現在レートで24兆円)。アリババ・グループ2,160億ドル(26兆円)、トヨタ自動車2,300億ドル(28兆円)に肉薄する。
直近年度の利益の方はというと、
 アマゾン:-2.5億ドル、アリババ:39億ドル、トヨタ:180億ドル

アマゾンの時価総額は利益ではなく、売上の成長によって正当化されている。
利益は成長のための先行投資によって抑制されているだけで、果実は後についてくるのだと。
ベンチャー企業では珍しくない論法だが、巨艦アマゾンは果たしてベンチャーなのだろうか。 売上成長率だけで言えば紛れもなくYesだ。

PL

売上高は10兆円になった今もなお2桁成長を続けている。
ところが、営業利益はまったくついてきていない。
ついてきていない、というより、むしろ減少している。
安売りによりマージンが犠牲になっているのだろうか。
いや、違う。粗利率は29%となっており、これは莫大な利益を上げているウォルマートよりも4,5ポイントほど高い。
答えはP/L上、"Technology and content"とされている、おそらく大半が先行投資で占められるであろう科目にある。
当費用は09年度には12億ドルでしかなかったが、14年度には93億ドルにまで膨張している。13年度は65億ドルだったので、伸び率は加速してすらいる。


私がアマゾン信者なら、下記の様な主張により現在の時価総額を正当化するだろう。

■急激な成長フェーズが終わり、"Technology and content"の発生が激減するとしたら? それだけで利益は1兆円近く増加することになる。

■また、粗利率は購買力の向上を反映してなのか不気味に上昇し続けている。営業利益に目を奪われると気づきにくいが、今現在も利益率は着実に良化しているのだ。

■さらに当社は15年の第1四半期において、今まで秘密のヴェールに隠されていたクラウドサービスであるAWS(Amazon Web Services)のセグメントを初めて公表したが、誰もが赤字を予想していたのに、その営業利益率は16%という驚くべきものだった。AWSはIBMやマイクロソフトのクラウド事業を蹴散らしながら自身の小売り事業よりも急激な売上成長を遂げており、これが将来アマゾンの主要事業となる可能性すらある。


ソフトとハードの有機的な融合が他社を寄せ付けない強さを形作っている点において、アマゾンとアップルは似ている。アマゾンにとってのソフトとは、信じがたいほど洗練された購買サイトのプログラムであり、ハードとは強固に構築された物流だ。


ところで、売上の拡大期には在庫や売掛債権などの運転資金が大量に必要になるのに、その原資ともいうべき利益が全く出ていない中、アマゾンはどのように成長のためのお金をファイナンスしているのだろうか。
B/Sをチェックしてみよう。

B/S

なるほど、有利子負債で賄っているというのは一目見てわかる。株主資本比率の低下速度が凄まじい。
しかし、真に注目すべき点は売掛金と買掛金残高のバランスにある。
それぞれの支払い・回収サイトが同じであれば、利益が乗っている分だけ売掛金の方が大きくなるのだが、アマゾンのB/Sは買掛金が常に売掛金残高を大きく上回っている。

これにより何が起きるのかというと、買掛金による資金調達ができるのだ。
売掛金は売上がたったけれども未入金のもの、買掛金は仕入れたものの供給業者にお金を支払っていないもの。そのため、キャッシュ・フロー計算において、売掛金の増加はキャッシュ減少要因、買掛金の増加はキャッシュ増加要因となる。普通の企業では、急激な売上拡大は売掛金が買掛金以上に増加することで必要運転資金も増加し、一時的に財務体質が悪化する要因となるのだが、アマゾンは売上拡大がむしろ運転資金減少に繋がるという稀にみる現象が起こっている。

売上成長が止まった場合、この手法によるファイナンスも止まる。しかし、その時、アマゾンは既に高収益企業に変貌している可能性が高い。

それでも私がアマゾン株に投資することは有り得ないだろう。少なくとも、当社が成熟企業になり、「普通」のPER水準で語れるようになるまでは。
アマゾンがこの社会にとって非常に価値の高い企業であることは疑いようがない。だが、それは消費者にとっての価値であり、投資家には永久に帰属しないものである可能性もまた否定できないのだ。

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