2015年9月9日水曜日

金利と債券価格、為替の関係

金利はとっても奥深くて、突き詰めて考えると経済全体がわかる。

金利が上昇する局面とはどういうものだろう。

・需給バランスで上がる
 景気がいいと皆が設備投資などでお金を使いたがり、借入需要が高まる。お金に希少性が出て、金利が上昇。

・金融政策で上がる
 借入増加を伴ってバブルが起こりつつあるようなとき、それを鎮静化するために中央銀行が売りオペ(金融引き締め)を行う。流通通貨量が人為的に減らされることによってお金の希少性が高まり、金利が上昇する。借り手にとって金利上昇はコスト高となるので、投資全般の収益性が圧迫されてバブルは沈静化する。

・インフレ予想で上がる
 インフレはお金の価値が減少する現象なので、インフレ率が年率10%と予想されているような状況で名目金利が例えば2%なら、貸し手は大損だ。貸したお金の価値が10%の勢いで減るのに、受取利息が2%しかないのだから年率8%の損を被ることになる。そんな時、貸し手は金利を例えば13%に設定する。これなら貸付金の価値減少-10%を勘案しても、3%のプラスリターンが得られる。この時、13%を「名目金利」、3%を「実質金利」と呼ぶ。新興国の名目金利が高い傾向にあるのは、それらの国のインフレ率が高いことの反映だ。お金は国境をいとも簡単に跨ぐので、理論上、実質金利は世界で均等化する。さもなくば、投資家は実質金利の低い通貨を借りて実質金利の高い通貨で貸すこと(キャリートレード)で利益をあげられるだろう。

この時点で、すでに難しい問題が表出している。実質金利は世界共通になると言っておきながら、「需給バランスで上がる」というのは完全にローカルな金利上昇要因なので、その国の実質金利は世界標準を超えて高くなってしまう。
しかし次の瞬間にはその国の通貨は裁定取引によって世界中の投資家に買われ、高い借入需要に供給が追い付きお金の希少性はなくなる。それで名目金利と実質金利が下がるだろう。
または、その国の通貨が買われることによって通貨高が起こる。通貨高は実質人件費を上昇させ、その国の国際競争力を奪い、次第に景気が悪化する。景気が悪化すれば、借入需要が減退することによって名目金利が下がり、実質金利はやはり世界標準に収斂する。


次の話題。
金利が上がれば債券価格が下がる理由は何だろう。こう考えるとわかりやすい。
あなたが10年国債を名目利回り2%となる価格で買った。わかりやすくするため、クーポンレート(表面利率)2%の国債を額面金額100万円で購入したことにする。あなたは大満足で5年間、2%の利息を受け取り続けた。
その後、突如として好景気となり、新たに発行される10年国債の名目利回りは4%に跳ね上がった。あなたは焦る。自分が持っている国債は満期まであと5年あるが、その間、2%の金利しか受け取れないので機会損失が発生してしまう。手持ちの国債を売却して、新規発行された10年国債を買い直したいと考えた。今持っている、残存償還年数5年の国債は、購入額であった100万円で売れるだろうか。売れるわけがない。市場には既に年率4%の国債が流通しているので、クーポンレート2%の国債を100万円で購入する人間などいるわけがないのだ。で、市場はあなたの国債に92万3,850円の値段をつける。その価格なら、5年後の満期で100万円が受け取れることを考慮すると、年率リターンが4%になる。あなたは市場の金利が上昇したことによって7万6,150円の売却損を被った。これが金利上昇により債券価格が下落するメカニズムだ。


次の話題。
金利が上昇すると、株価にどのような影響を与えるか。
現代ポートフォリオ理論の中核をなすCAPMによると、株価は「リスクフリー・レート+リスク・プレミアム」によって構成される。この二つを合算値が期待リターンであり、株価は「EPS÷期待リターン」となる。EPSが同じなら、期待リターンが高いほど株価は低くなる。
金利の上昇は、国債利回りを想定しているリスクフリー・レートの上昇を意味する。つまり、期待リターンを上昇させる効果がある。そのため、金利上昇は株価の下落要因だ。
テクニカルな側面から離れて実体経済からのアプローチを試みると、金利上昇は企業の設備投資意欲を減退させ、景気減速を招くので株価が下落すると考えることもできる。しかし、金利が上昇する局面は景気が拡大していることの反映でもあるので、まだまだ企業業績への期待から株価が上昇するポテンシャルがあるとも解することが出来る。なかなか一筋縄ではいかない。


昨今ではついに短期国債でマイナスの名目金利が実現した。お金を貸せば、利子が取られる寸法だ。日銀がインフレ率2%を目指すと言っている中で名目金利がマイナスということは、実質金利はさらにマイナスになるということなのか。おそらく、債券投資家の誰もが日銀のインフレ目標が実現不可能と考えていることの表れなのだろうが、新規国債の大半を日銀が吸収するして需給バランスが崩壊していることも多分に影響しているだろう。インフレ率を高めるなら金利を上昇させなければならないが、その一方で異次元の買いオペによって金利を下げている。この矛盾が将来的に何らかのカタストロフィを引き起こしはしまいか。思慮を巡らせてみるのも面白い。

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