[ 銘柄分析 ] 日精エー・エス・ビー機械

事業内容は『PETボトルなど、プラスチックボトルの生産機「ストレッチブロー成形機」、金型、付属機器、部品の企画・開発・製造および販売』
本社は長野県にあって、こんな感じ。


いかにも浮ついていなさそうなところが良い。


いつものように、興味を惹かれた理由はROE推移を見てのことだ。 まず私はビジネスモデルや業種よりも、ROEの推移から入る。


売上成長とROE向上が同時に起こっている。しかも上記の表には載せていないが、リーマンショック真っ只中の2009年9月期にも流石に前期より減益ではあったものの営業利益10億円強を計上しており、不況耐性も強そうだ。機械装置の設計・製造・販売という景気の影響を強く受けそうな事業を営んでいながら、最悪の不況を余裕の黒字で乗り切っていることは特筆に値する長所と言える。
当社は二つのセグメント情報を開示している。製品群別売上高と国別売上高だ。

 国別売上高


製品群別売上高


製品群別といっても、金型などすべてはストレッチブロー成形機に付随する交換・消耗用品であり、売っているものは単一セグメントと考えてよいだろう。そのため、より重要なのは国別売上高情報だ。そして、一目見て程よく分散されていることがわかる。

しかし、利益情報がないので「どの国で稼いでいるのか」や、「成形機械で儲けているのか、それとも金型などの消耗品で儲けているのか」といった重要なことは何一つ読み取れない。もっと情報開示が進むことを望む。

次にバランス・シートを見てみよう。
有利子負債34億円に対し現預金62億円なので、実質無借金経営。
純資産項目の中に紛れ込んでいて表記上は省略しているが、投資有価証券の時価10.7億円に対し、有価証券評価差額金が5.7億円もある。税効果前に換算すると、含み益は9億円弱に上る。有価証券の保有目的は「主に取引先企業との関係強化・維持を目的とした株式」とある。いるのか?
定期預金にも十数億円単位でがっつり残高がある。

豊富な現預金を定期預金という低リターンの金融商品に突っ込んでいたり、多額の有価証券を保有していたりと資金は無駄にジャブジャブしている。
インドに新工場を建てたりと事業拡大中であり、今後、多くの資金需要が生じるのであろうか。
そうではないことは、キャッシュフロー計算書を読めばわかる。
当期利益が40億円くらいある中で、インド新工場投資があった昨年度でも、有形固定資産の取得はせいぜい10億円程度。借入金に頼らず、利益の範囲内で余裕の事業拡大が可能なようだ。ならば、やはり少なくとも定期預金などに回すくらいであれば、配当なり自社株買いなりをすべきだと思う。配当性向はわずか20%だ。成長が一服したら、いかにもアクティビスト(物言う株主)の標的になりそうな企業という印象を受ける。

B/Sで他に気になる点は、棚卸資産の多さだ。なんと、有形無形固定資産の倍近くあり、売上高回転月数にすると5ヵ月近い。いくら高利益率によって資金繰りが問題ないとはいっても、改善の余地大と評価せざるを得ない。もしかしたら、事業特性により仕方のない部分があるのかもしれないが、当社の決算短信や有価証券報告書は何も語ってくれない。


【投資対象としての評価】

あらゆる企業と同じように、良い部分と悪い部分が混在しているが、当社は良い部分が突出している。不況耐性が備わっていそうなこと、成長中であること、インドへの大型投資等上昇意欲も旺盛なこと、財務戦略に改善余地が多分に残されていて、指摘されさえすればそれを理解する見識も持ち合わせていそうなこと、そして株価が割高圏にはないことを勘案して、魅力的な投資対象であると考える。

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