2015年9月6日日曜日

柔軟な自社株買いプログラム

 ブルームバーグニュースによると、足元の米国市場急落の局面において、ゴールドマン・サックスの顧客企業からの自社株買戻し注文は過去最高水準に達したという。マイ・ポートフォリオ上位の銘柄群はIBMを筆頭にどれも継続的な自社株買いプログラムで知られる企業ばかりで、しかもその強固で多様な事業基盤ゆえにほとんどどのような環境においてもフリー・キャッシュフローが有り余っている(ただ、原油価格の暴落の影響を受けたエクソン・モービルは設備投資を削減するなどFCFがやや苦しくなっている)。疑う余地なく、今回の急落で大量の自社株買いを行っている。
 私自身に買付余力がないにもかかわらず、株価暴落を涼しい顔で見ていられる理由の一つがまさにこれだ。私自身が割安になった株を直接買い増す代わりに、企業が買い増しを行って間接的に私の持分比率を上げてくれる。株価下落により実質的な持株数の増加が加速しているとも言えるし、潜在的なキャピタル・ゲインが急速に膨らみ続けているとも言える。

 そして、米企業の自社株買いが過去最高に達しているというニュースには他にも重要な意味合いが含まれている。それは、企業は今後の収益見通しに依然として強気であり、株価の急落はファンダメンタルズの観点から行き過ぎであると考えていることを示唆している。自社株買いは究極のインサイダー情報に基づいて行われているので、その規模の大小は注目に値する。実際のお金が動いているので、会社やアナリストが発表する業績予想よりも信頼できる情報であることが少なくない。
 ちなみに、米国では経営幹部のインサイダー売買情報が公表されており、この売買動向こそまさに個別企業業績の先行きを見通す最高の指標と言えよう。経営者が実際の業績悪化の前に株を売り抜けて利益を手にしていると想像するのはあまり愉快なことではないが、彼らの金銭欲が結果としてアウトサイダーに有益な情報を提供してくれていると考えれば、菩薩のような心でその強欲を許そうではないか。

 日本企業も自社株買いが増えてきて結構なことだ。あとは東証が開示要件を緩めて企業が機動的に自社株買いを実行できる仕組みにしていけば、暴落を心から待ち望む投資家がもっともっと増えるに違いない。乱高下に一喜一憂してスリルを味わうのも楽しいかもしれないが、どっかり座って株式そのものを信頼し、暴落局面でも株価のことなんて考えなくて済むような境地もまた楽し。

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