2015年10月28日水曜日

しつこいようだが、もう一度自社株買いについて語りたい

自社株買いが株価に対して中立なのではないかという論点があるらしいと風の噂で聞いた。
しかし、そんな論点は完全な虚構だ。結論は決まっている。自社株買いは株価にとって中立なんかではなく、それによって理論株価は必ず上昇する。

おそらく、これを論点と捉えているのは企業価値と株価を混同しているためだと思う。自社株買いが、時価総額という観点から企業の本源的価値に何ら影響を及ぼさないのはまた事実だから。
これは会計面からはっきりしていて、自社株買いが行われることで現預金が減り(もしくは有利子負債が増加し)、自己株という資産が増える(会計処理的には純資産が減る)。
だから、資産が別の資産に形を変えるだけ。B/S面からみた企業価値には何の影響もない。

しかし、自社株買いが需給面を抜きにしても株価に対して中立だということはない。自社株買いは時価総額ではなく、一株当たりの価値の密度を濃くする作用があるからだ。パイの大きさは変わらず、パイを分ける人数が減る。だから一人あたりのパイの大きさがでっかくなる。
別のアプローチをすると、自社株買いによって株価が上がらず流通株式だけが減るのであれば時価総額が減ってしまうが、企業の本源的価値が変わらないからこそ、そういうことは起きないと言える。

自社株買いの有効性について正当な疑問をさしはさむとするならば、それは「自社株買いに回すはずだった金を再投資して利益を増やした場合」との比較になろう。
事業へ再投資すれば20%の収益率が見込めるのに、人気株で常時高値に位置する自社株買いの潜在リターンは10%しか見込めないならば、自社株買いをすべきではない、とか。だから、「株主利益に対して中立か否か」というのなら、話はわかる。

自社株買いによる株主還元の機運を一過性のブームで終わらせないためにも、株主還元の本質的な意味について、投資家は正確に理解しておきたい。


〜追記〜
もう一点、注意喚起しておきたい事例がある。
最近、インバース型のETFを相場下落のヘッジとして長期間持ち越している個人投資家をよく見かけるようになった。しかも、その多くは商品特性を理解しないまま保有していると推測される。
ただ「ショート(空売り)したい業界」でも触れたように、レバレッジ型なりインバース型なりのETFは、中長期の保有には適さない代物だ。これらは指数に連動するわけではなく、「指数の日々の変動率」に連動するよう設計されたものなので、理論的には1日を超えて保有するとヘッジではなくギャンブルになる。(そもそも株式を保有していながら下落に備えたヘッジをかけるという発想が私には今一つ理解できないのだが、それは置いておくとしよう)
特にインバース型は指数がボックス相場でも損するようになっているので、ヘッジ目的でお持ちの方は一刻も早く売却するのが良いと思う。値動きのメカニズムについては過去記事を参照されたい。

1 件のコメント:

  1. ヘッジ目的なら日経先物・先物miniがあり、手数料的にも安いのでインバースの利用目的がいまいち理解できないんですよね。

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