バークシャー決算の不思議


 連結決算業務は結構大変なんだ。連結グループ会社の決算書をかき集めて単純合算すればいいというような簡単な話ではない。例えば「製造子会社A社→販売子会社B社→顧客」という商流が連結グループに存在しているとする。P/Lについて言えば、A社とB社を合算すると同じ商品で売上が2回計上されている。連結グループを一つの会社として考えると、売上として認識されるべきは顧客に販売した部分のみなので、A社→B社への売上はグループ間取引として消去されなければならない。またB/Sについても同様で、A社に計上されているB社に対する売掛金と、B社に計上されているA社に対する買掛金は、互いにグループ間取引に係る債権債務ということで消去されなければならない。他にも無数の調整処理があるものの、大雑把に言えばこんな具合で連結財務諸表は作られている。言うまでもなく、このような調整作業はグループ会社が思い思いの様式に基づいて締めた決算書を漫然と集めるだけでは、連結決算を1ヵ月やそこらで締めるのは到底不可能だ。親会社本社がグループ会社間の「勘定科目マスター」「グループ会社マスター」を整備・周知し、報告様式を統一した上でデータを収集する必要がある。その要請に応えるため、子会社側でも連結作業用のマスターをメンテナンスが求められる。このように準備が大切なのだ。ある日突然どこかの会社を買ってきて、次の日から連結に取り込むことが出来るほど決算実務は生易しくはない。

 そこで疑問が湧きあがるのが、ウォーレン・バフェット率いる投資会社バークシャー・ハサウェイの決算作業についてである。
 同社は投資先の子会社の経営に口を出さないことで知られており、月次連結さえ行っていないという。気持ちとしては、通常の企業グループのように「投資先が全て合わさって一つの会社」という意識はほとんどないことだろう。しかしSECの要請に基づいて、鉄道会社BNSFも、電力会社バークシャー・ハサウェイ・エナジーも、保険会社GEICOも、全てを集約して連結決算書を作成している。
 疑問はここにある。基本的に子会社を放置プレーしている純粋投資会社のバークシャー・ハサウェイ本体は、そもそも社員数も数えるほどしかおらず、先に述べたような連結決算を完遂するためのマスター整備や膨大な数の子会社への事務連絡を行うだけのリソースが足りていないことが予想される。子会社同士もたまたま親会社が同じなだけであって事業の繋がりが薄いので、お互いがグループ会社だという意識も希薄なことだろう。本社機能が弱いことと、グループ会社間の事業的な結びつきが薄いことは、連結実務を考える上でこれ以上ないほど最悪の組み合わせである。
 想像してみよう。電力会社バークシャー・ハサウェイ・エナジー(BHE)の販売先にはおびただしい数のグループ会社があるはず。グループ会社への電力売上が消去されなければならないことはすでに述べた。そのため、BHEは間違いなく主要なグループ会社、そしてそのまた子会社を含めれば数百では足りない数の連結会社マスターを常に整備している。そのマスターを最新版に保つためには、どうしても強力な親会社機能が必要なのだ。なにしろ、自身が一子会社に過ぎないBHEは、バークシャー・ハサウェイがいつ、どんな会社を買収して新たに連結に加えるのか知りようがないのだから。

 そんなわけで今日は
問題提起もなく、自分の知識を開陳するでもなく、単に疑問に思ったことを書き逃げするだけの記事となる。まあ、連結決算を締める専門のシェアードサービス子会社があって、そこが上手くやってんじゃないかな(適当)


冒頭画像
『ゼイリブ』ジョン・カーペンター


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