2016年 ウォーレン・バフェットの株主への手紙
我々の成したいこと
バークシャーのバイス・チェアマンで私の相棒でもあるチャーリー・マンガーと私は、当社の一株当たり"平常"収益力は毎年増加していくと予想している。もちろん実際の会計収益は景気循環によって減少し得る。それどころか、大規模な保険金支払いやその他特殊要因により、アメリカ経済が好調な時にさえバークシャーの利益は減少する可能性がある。
しかし、経済が好調であろうとなかろうと、時間とともに収益力を拡大していくのが我々の仕事だ。結局のところ、バークシャー経営陣は、あなた方の投下資本管理人として内部留保を有効に管理する役目を負っている。実際、2015年と2016年においてバークシャーはアメリカ企業で最も内部留保の多い会社となり、それらは毎年再投資されることによって2位以下をさらに引き離している。再投資されたお金はランク維持のためにも利益を生まなければならないのだ。
普段、我々の事業の基礎的収益力がもたらす利益は目立たないが、まれにキャッシュレジスターがけたたましく鳴ることがある。チャーリーと私は大きな夢を見る以外に利益を拡大する魔法の計画を持ち合わせていないため、そういう機会が与えられた時、速やかに行動できるよう精神的にも財政的にも準備を欠かさない。何十年もの間、暗い雲が経済を覆いつくし、それらは簡単にお金を吹き飛ばすとする。そうしたどしゃ降り状態で、我々はティースプーンではなく大きなたらいをもって外に飛び出すだろう。そして実行するのだ。
以前述べたように、我々は少しずつ投資活動で利益の大半を稼ぐ会社から、成長し価値あるビジネスを保有する企業へと移行している。この変革の立ち上げはまず小さな一歩からスタートした。バークシャーの有価証券投資による利益にたやすく隠れてしまうほど小規模な企業を買収したのだ。こうした慎重なアプローチにもかかわらず、私は1993年にデクスター・シューを4.3億ドルで買収するという実に酷いミスを犯した。デクスターの価値は買収後、すぐにゼロになった。悪い話はこれだけに留まらない。私は買収に際して25,203株のバークシャー株式を使ってしまったのだ。2016年現在、その株式価値は60億ドルもある。
その失態に続いて、現在の我々の方向性を決定づける3つの重要な出来事-2つはポジティブ、1つはネガティブ-が起きた。1996年初頭、我々はまだ保有していなかったGEICOの残り半分の株式を現金で取得した。この買収により、GEICOの位置づけはポートフォリオ・インベストメントから完全保有による事業運営ビジネスに切り替わった。GEICOはその無限の潜在力によってすぐに我々の事業の中核を占めるようになり、今では世界で最も価値ある損害保険会社になったと信じている。
不幸なことに私はGEICOが1998年の後半にジェネラル・リーを買収する際、愚かにも船一杯のバークシャー株を使うことを承認してしまった。いくつかの問題を乗り越え、ジェネラル・リーは称賛されるべき優れた保険会社となった。それにもかかわらず、ジェネラル・リー買収のために272,200株のバークシャー株を新規発行し、21.8%の希薄化を起こしてしまったのは私の酷いミスで、バークシャー株主は利益よりもはるかに大きな損失を被った。(輝かしく見えても、褒め称えられるには程遠い買収だった)
2000年初頭、この愚行を償うため、素晴らしい経営がなされている公益企業で、我々に大きな収益と社会的意義のある投資機会をもたらしてくれるミッドアメリカン・エナジー株の76%(今では90%になっている)を取得した。ミッドアメリカンの"現金"取得-私は学んだのだ-は、我々が現在進む道を確固たるものにした。すなわち (1)保険事業をビジネスの基軸とし; (2)大規模で多様化された保険以外の事業を精力的に買収し; (3)それらの取引を事業が稼ぎ出す内部収益でまかなう。(今日では私はバークシャー株の新規発行よりも、大腸内視鏡検査の準備をしたいと思うようになった)
我々の債券と株式からなるポートフォリオは1998年以降、堅調に推移し、控えめに言っても巨額のキャピタルゲイン、利息、配当をもたらした。これらの投資収益は事業買収の資金調達の大きな助けとなっている。型にはまらないやり方ではあるが、バークシャーの資産配分に関する2種類のアプローチは我々に本物のエッジ(競争力)を与えている。
次の表は我々が今の方向性に本格的に舵を切った1999年からのフィナンシャル・レコードだ。18年間にバークシャーの発行済み株式総数は8.3%増加し、そのほとんどはBNSFの買収によるものだ。これは意義ある株式発行だったということができる。
(1) 事業損益には投資先の配当収益を含む。ただしキャピタルゲイン/ロスは含まない。
(2) 投資損益の大部分は実現したキャピタルゲイン/ロスだが、GAAPが要求したものについては未実現の損失を含む
売却タイミングによって発生はランダムではありつつも、投資利益が今後もバークシャー全体でかなりの額を占め、ビジネス買収の原資になってくれると期待している。同時にバークシャー傘下の事業会社のCEOたちも個々の事業利益を増やすことに集中し、そのために時には企業買収を実行するだろう。バークシャー株の新規発行を避ける限り、あらゆる利益改善は一株利益の向上に直結する。
引用部分に通底するメッセージは「株式発行の愚」ということになるだろうか。原則としてあらゆる増資は愚策であるというのは私も何度か主張してきたので大いに頷くところだが、目を凝らすとバフェットの隠れたメッセージが浮かび上がる。第2パラグラフにおいて、バフェットはバークシャーの内部留保が米国屈指の規模となったことを誇っている。口では常々バークシャーの自社株買いに含みを持たせているものの、結局のところバフェットは投資狂であり、投資の貴重な原資である内部留保を配当や自社株買いで減少させるようなことはなかろうという印象を強固にする手紙になっているように思える。私がバークシャー株を購入しないのは、まさにそれが理由なのだ。
バークシャーのバイス・チェアマンで私の相棒でもあるチャーリー・マンガーと私は、当社の一株当たり"平常"収益力は毎年増加していくと予想している。もちろん実際の会計収益は景気循環によって減少し得る。それどころか、大規模な保険金支払いやその他特殊要因により、アメリカ経済が好調な時にさえバークシャーの利益は減少する可能性がある。
しかし、経済が好調であろうとなかろうと、時間とともに収益力を拡大していくのが我々の仕事だ。結局のところ、バークシャー経営陣は、あなた方の投下資本管理人として内部留保を有効に管理する役目を負っている。実際、2015年と2016年においてバークシャーはアメリカ企業で最も内部留保の多い会社となり、それらは毎年再投資されることによって2位以下をさらに引き離している。再投資されたお金はランク維持のためにも利益を生まなければならないのだ。
普段、我々の事業の基礎的収益力がもたらす利益は目立たないが、まれにキャッシュレジスターがけたたましく鳴ることがある。チャーリーと私は大きな夢を見る以外に利益を拡大する魔法の計画を持ち合わせていないため、そういう機会が与えられた時、速やかに行動できるよう精神的にも財政的にも準備を欠かさない。何十年もの間、暗い雲が経済を覆いつくし、それらは簡単にお金を吹き飛ばすとする。そうしたどしゃ降り状態で、我々はティースプーンではなく大きなたらいをもって外に飛び出すだろう。そして実行するのだ。
以前述べたように、我々は少しずつ投資活動で利益の大半を稼ぐ会社から、成長し価値あるビジネスを保有する企業へと移行している。この変革の立ち上げはまず小さな一歩からスタートした。バークシャーの有価証券投資による利益にたやすく隠れてしまうほど小規模な企業を買収したのだ。こうした慎重なアプローチにもかかわらず、私は1993年にデクスター・シューを4.3億ドルで買収するという実に酷いミスを犯した。デクスターの価値は買収後、すぐにゼロになった。悪い話はこれだけに留まらない。私は買収に際して25,203株のバークシャー株式を使ってしまったのだ。2016年現在、その株式価値は60億ドルもある。
その失態に続いて、現在の我々の方向性を決定づける3つの重要な出来事-2つはポジティブ、1つはネガティブ-が起きた。1996年初頭、我々はまだ保有していなかったGEICOの残り半分の株式を現金で取得した。この買収により、GEICOの位置づけはポートフォリオ・インベストメントから完全保有による事業運営ビジネスに切り替わった。GEICOはその無限の潜在力によってすぐに我々の事業の中核を占めるようになり、今では世界で最も価値ある損害保険会社になったと信じている。
不幸なことに私はGEICOが1998年の後半にジェネラル・リーを買収する際、愚かにも船一杯のバークシャー株を使うことを承認してしまった。いくつかの問題を乗り越え、ジェネラル・リーは称賛されるべき優れた保険会社となった。それにもかかわらず、ジェネラル・リー買収のために272,200株のバークシャー株を新規発行し、21.8%の希薄化を起こしてしまったのは私の酷いミスで、バークシャー株主は利益よりもはるかに大きな損失を被った。(輝かしく見えても、褒め称えられるには程遠い買収だった)
2000年初頭、この愚行を償うため、素晴らしい経営がなされている公益企業で、我々に大きな収益と社会的意義のある投資機会をもたらしてくれるミッドアメリカン・エナジー株の76%(今では90%になっている)を取得した。ミッドアメリカンの"現金"取得-私は学んだのだ-は、我々が現在進む道を確固たるものにした。すなわち (1)保険事業をビジネスの基軸とし; (2)大規模で多様化された保険以外の事業を精力的に買収し; (3)それらの取引を事業が稼ぎ出す内部収益でまかなう。(今日では私はバークシャー株の新規発行よりも、大腸内視鏡検査の準備をしたいと思うようになった)
我々の債券と株式からなるポートフォリオは1998年以降、堅調に推移し、控えめに言っても巨額のキャピタルゲイン、利息、配当をもたらした。これらの投資収益は事業買収の資金調達の大きな助けとなっている。型にはまらないやり方ではあるが、バークシャーの資産配分に関する2種類のアプローチは我々に本物のエッジ(競争力)を与えている。
次の表は我々が今の方向性に本格的に舵を切った1999年からのフィナンシャル・レコードだ。18年間にバークシャーの発行済み株式総数は8.3%増加し、そのほとんどはBNSFの買収によるものだ。これは意義ある株式発行だったということができる。
(1) 事業損益には投資先の配当収益を含む。ただしキャピタルゲイン/ロスは含まない。
(2) 投資損益の大部分は実現したキャピタルゲイン/ロスだが、GAAPが要求したものについては未実現の損失を含む
売却タイミングによって発生はランダムではありつつも、投資利益が今後もバークシャー全体でかなりの額を占め、ビジネス買収の原資になってくれると期待している。同時にバークシャー傘下の事業会社のCEOたちも個々の事業利益を増やすことに集中し、そのために時には企業買収を実行するだろう。バークシャー株の新規発行を避ける限り、あらゆる利益改善は一株利益の向上に直結する。
引用部分に通底するメッセージは「株式発行の愚」ということになるだろうか。原則としてあらゆる増資は愚策であるというのは私も何度か主張してきたので大いに頷くところだが、目を凝らすとバフェットの隠れたメッセージが浮かび上がる。第2パラグラフにおいて、バフェットはバークシャーの内部留保が米国屈指の規模となったことを誇っている。口では常々バークシャーの自社株買いに含みを持たせているものの、結局のところバフェットは投資狂であり、投資の貴重な原資である内部留保を配当や自社株買いで減少させるようなことはなかろうという印象を強固にする手紙になっているように思える。私がバークシャー株を購入しないのは、まさにそれが理由なのだ。
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