衰退銘柄への投資
成長銘柄でなくたって、市場の期待値さえ低ければ十分なリターンは得られるんです。
[ 諸条件 ]
純利益成長率 : -2.5%
PER : 8.0倍
配当性向 : 100%
投資家は配当を全額再投資に回す。
なお、税金は考慮しない。
PER8倍、永久成長率-2.5%の銘柄への投資によって得られるリターンは下記の公式によって算出される。
期待リターン = 株式益回り(PERの逆数) + 永久成長率
= 1/8 + (-2.5%)
= 10%
ほらね、成長なんて必要ない。
でも、あなたは疑っている。もしくは肌感覚としてこの現象が理解できない。だから成長銘柄ばかりを追いかけ続けているのだ。というわけで、今回は上記の簡潔な計算式を、具体的なシミュレーションに落とし込んで確認することにしよう。
株価は衰退銘柄にふさわしく10年間で1,600円→1,274円と20%下落したが、マイナス成長を織り込んだ低い株価(PER)が配当再投資の株数増加を加速させ、リターン(IRR)は年率10.0%と理論計算通りの結果が導き出された。
仮に利益還元が配当によってではなく、自社株買いによって行われていた場合、年率2.5%で利益額が減少し続ける一方、年率12.5%(PER8倍の逆数)で流通株式数が減少し続け、その結果としてEPSは年率10%増え続ける。そして株価も年率10%で上昇し続け、年率10%のリターンが得られるという結果になるわけだ。
アベノミクス以後の個人投資家の間では「成長なくしてリターンなし」という風潮があまりにも強いように感じるが、そんなことはあり得ない。成長しようが衰退しようが、それ自体は投資リターンとは何の関係もないのだという基本にしっかりと立ち返る必要がある。予測された衰退であれば、予測された成長と全く同じパフォーマンスが得られるのだ。
そして衰退銘柄投資で何よりも重要なのは株主還元で、当シミュレーションも還元性向100%あってこそのリターンとなっている。
PER8倍で還元性向100%だから配当利回り12.5%ということになり、「そんな高配当銘柄存在しないよ!」と文句を言われる方がいるかもしれない。
確かにそうだ。いくらマイナス成長銘柄だろうと、全額配当に回せば配当目当ての買いが集まり、PERはもっと高くなるに違いない。逆に言うと、株主還元姿勢にはそれだけの対価を支払う価値があるということでもある。
なのに、投資の当てもなく利益を内部留保に回してぶくぶく肥大化する企業たちよ、君たちは2回くらい生まれ変わって海より深く反省すべきだと思わないか? 私は強く思うね。
このテーマについて語る際に具体例を挙げるとすれば、やはりIBMになるでしょうか。
返信削除2011年にバフェットがIBMについて「今後長期にわたってIBMに投資し続けるつもりならば、株価が低迷することを祈るべきである」と年次報告書で語っていましたが、この概念を理解していないと何を言っているのかさっぱり理解できないと思います。というか、当時の自分はさっぱり理解できていませんでした。
投資を行う上では、「何を」と同じくらい「いくらで」というのも大切な考え方ですね。
まさにこのテーマでのシミュレーションを検討した際、IBMの実績数値を用いようかと思いました。
削除自社株買いを行う会社の株価が低迷するのは本当にありがたいことです。
日本にもありましたよ。
返信削除株価上がる前のピープルとか。IRに異常に力を入れている小さな会社で、成長ここ2年くらい急成長していますが2年以上前は良いサンプルでした。
成長銘柄でなくても株主還元をしっかりしていれば複利の恩恵を享受できる、というのは分からないのではなく教えていないからでしょうね。
単純なことで別に否定することの事でもないので、理解できないのは理解しようとしていないから。
別に極論を言っている訳じゃない。
内部保留に回されると悲惨ですけどね。
そういう銘柄は万年割安株になりますから…。
今のピープルの評価は以前とは別次元ですね。あとは業績ヨコヨコのBPカストロールもPER6倍前後で微動だにしなかった頃が懐かしい。
削除配当は配当利回りという指標で目立ってしまうので、なかなか6%を超える水準に市場は放置してくれませんが、継続的な自社株買いで還元利回り一桁台後半とかなら、米国企業にいくつか存在します。自社株買いには課税繰り延べだけでなく、機械的なスクリーニングで高還元であることがあぶり出されるのを避け、株価を低く保ってくれる覆面効果もあると思ってます。IBMやディズニーが自社株買いを全額配当に回したら、きっとすぐさま株価が跳ねるでしょうから。
補足訂正。
返信削除配当利回り12.5%の銘柄は日本にはないですね。