2016年2月15日月曜日

エスクリの超絶下方修正に対する所感

 私も含めた一部個人投資家の間で人気を博していたブライダル企業エスクリが、ご存じの通り稼ぎ時の3Qでの冴えない実績数値と同時に、通年利益の大幅な下方修正を発表した。ストップ安張り付きも当然の内容だと思う。
 会社が半ば虚偽のIRで投資家を欺いていたと見なされても仕方のない事実が明らかになったことが、この発表を単なるマイナス成長であること以上に救いのないものにしている。
 確かに十分に注意深い投資家であれば、昨年度における固定資産耐用年数の長期化による見せかけの費用減や、期首における歯切れの悪い減益予想説明など、1年前からビジネス実態の劣化を感じ取るに足る状況証拠は散見されたのだが、上場株への投資というのは、投資家にそこまでの自己責任を転嫁するようなシステムにはなっていないと認識している。式場ビジネスは受注から売上計上まで半年以上かかることが通例なので、今上期の減益が「一時的な出店費用」や「内製化などの初期費用」によるものではなく、既存式場の成約率の急減速にあったことは、期首に減益予想を開示した会社自身が一番よく知っていたはずだ。エスクリ経営者がとっちめられるべき理由は、成長減速ではなく、その不誠実な態度にある。不平に代えて、強く更正を要求したい。

 しかし、今回の投稿の主眼はエスクリの投資家に対する企業姿勢を罵倒することの他にもう一つある。それはもちろん、当社株の悶絶するほどの暴落が私の投資パフォーマンスに及ぼす影響を切々と語ることではない。当ブログはそういう名もなき一投資家の個人的な投資ストーリーを切り売りするモデルを採用していないので、この際どうでも良いこととして切り捨ててしまう。もう一つの主題とは、エスクリの下方修正から普遍的な教訓を抽出してみることにある。当事例は久しぶりに投資における当たり前のことを思い出させてくれることになった。エスクリには感謝してもし足りない。どうもありがとう。


[教訓1] 事業はいとも簡単に劣化する
 エコノミック・モート(経済的な壕)は確かに存在する、と言い換えてもいい。
 アクセルボタンしかなかったエスクリの利益に巻き戻し機能が新搭載されたのは、確かに「性急な出店拡大によるプランナーの育成不足」などの特殊要因は無視できない。だが、ビジネスモデルに確固たる独自性が備わっていれば、1年やそこらで損益状況が急変することはなかったはずだ。結婚式場は誰もが指摘するように参入障壁が非常に低いビジネスであるが、素晴らしい過去の実績推移がエコノミックモートを間接的に保証すると高をくくり、定性的な分析を軽視する投資家は、往々にして式場ビジネスの本質的な脆弱性を無視し、自らの楽観的な見方を裏切られることになる。
 ちなみに、モーニングスター社はエコノミックモートの構成要素を下記のように定義している。

①ネットワーク効果がある
 プラットフォームビジネスが最たる例。利用者が増えるほど、競合に対する優位性を確固たるものにする。
②無形資産(ブランド力・特許)がある
③コスト優位性がある
④乗り換えコストがかかる
⑤業界が効率的な規模である
 ニッチな業界で既に寡占企業が存在しているなどで、後追い企業がわざわざ攻める程でもない中規模・小規模な城の壕という意味。
 もちろん、群雄割拠の式場ビジネスには当てはまらない。


[教訓2] 思い入れに捕われた投資家は見たいものしか見ない
 ためしに、私の過去のエスクリに関する投稿から、不都合な情報を無視しようと試みている箇所を引用してみよう。適度な注意深さは確認できるが、重大な懸念点をいともたやすくスルーしている。

「先行投資は内製化を推し進めるためのもので、およそ6億円との説明があった。金額的にはこれが減益の一番の要因だろう。具体的には何なのかよくわからないが」



[教訓3] 企業経営者は時に都合のいいストーリーを描く
 実際のところ、多分、エスクリはウソをついたわけでも、ましてや投資家を欺こうとしたわけでもない。期首時点では足元の成約率減少を、下期には本気で挽回しようと考えていたのだ。私は管理会計の実務責任者として、経営者が都合のいい妄想を自らに信じ込ませようとしている様を何度も見てきた。そのような時、「希望」が企業の新たなビジネスモデルになる。希望は経営者にとっても投資家にとっても甘美なものだ。それがはかないものであることが露呈するまでは。



[教訓4] 誰もが人の不幸を願っている
 エスクリの下方修正によって、ブログのアクセス数が増加した。

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