-演説- 1996年 ロベルト・ゴイズエタ

2016年最初の投稿は、他人の言葉から始めることにする。

コカ・コーラ元CEO ロベルト・ゴイズエタ
エモリー大学卒業記念式典での演説


~抄訳~

 コカコーラの基本的使命はコカコーラの所有主(株主)のために価値を創造することにある。
 なぜか。
 三つの点に要約できる。
 第一に、株主価値を長期にわたり増加させることは、我々が生きている社会、すなわち民主的な資本主義社会が我々に要求していることである。我々の社会においては構成員それぞれがそれぞれの役割を担っている。企業は人々が提供した財産の価値を増加させることがその役割である。
 そして株主価値を創造させることができる健全な企業のみが雇用を維持し、従業員に多くの機会を提供し、顧客に奉仕できる。そして株主価値を創造する企業のみが社会に貢献できる。それが二番目の理由である。
 株主価値を創造し企業の価値を増加させているから社会に貢献できる余力が生まれる。
 価値創造は長期的視点で行われなければならない。
 これが三番目の理由である。長期的に価値を創造し続けるためには、Economic Valueにベースをおいた経営が必要である。短期的に利益をあげるためには多くの手段や方法があるがそれは誰の利益にもならない。
 株主価値を長期的視点から増加させることが、株主以外の企業関係者(Stakeholder)のためでもある。そして、それが安定した健全な社会を築く条件である。
 企業は社会福祉のために存在すると考えるのは間違えているのと同時に、企業は社会福祉に一切係るべきでないと考えるのも間違えている。
 アトランタの清涼飲料水の会社(コカコーラの本社はアトランタにある)のセールスマンと2万6千人の社員の役割は、少しでも多くのコカコーラを売るということのみではない。会社の所有者のために長期的に価値を創造することである。
 それが現在の経済システムが我々に要求していることであり、それが社会に意義のある貢献ができる道である。
 一企業人として我々は以下の点を絶対に忘れてはならない。
 我々を雇ってくれている企業の所有者(株主)の価値を長期的な視点で創造することが、株主のみならず、従業員や得意先や社会に奉仕する最善の方法である。すなわち、全てのステークホルダーに奉仕できる最善の方法である。
 究極的にはそれこそが我々の仕事なのだ。


【補足】
 全文はかなり長いので相当短くしている。原文が気になる方は下記サイトを参照願いたい。
http://goizueta.emory.edu/aboutgoizueta/quotes/calling_full.html

 省略された部分を拾い上げて補足・解説してみたい。
 なぜ株主価値の創造が全てのステークホルダーに奉仕する最善の方法であるのか。株主に帰属する利益というのは、従業員、顧客、取引先、金融機関、社会(国家)に対するコストを全て負担した後に残るものだ。つまり、株主利益に到達するまでに、企業活動は全てのステークホルダーを通過することになる。どこか途中のステークホルダーの満足で止まってしまうのは安易な経営であり、全てを通過して株主利益を増加させる経営こそが、真にすぐれた仕事だ、とゴイズエタは言っている。

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