2015年8月16日日曜日

[ 業界分析 ] 海運業(と少し鉄鋼業)

 決して経営も投資もしたくない海運業を分析する動機は他でもない、「ザ・キング・オブ・循環株」としての特徴を確認するためにある。この業界は、運賃と収入は安定しているものの利益率の低い定期船か、相対的に利益率は高いものの激しすぎる運賃変動にさらされる不定期船のどちらをメインとするかによって収益構造に違いが出るが、総じて景気の変動を受けやすい。
 その最大の要因は、やはり多くの循環株がそうであるように設備投資タイミングの難しさにある。船舶建造には一隻あたり100~200億円もかかり、しかも大口顧客の要求に応えるためにはある程度の船団を整える必要がある。海運業が絶好調の時に各社がこぞって船舶を発注し顧客需要に対応しようとするものの、建造には 2~3年を要す。出来上がる頃には市況が下火になってきて、めでたく供給過剰状態の出来上がりという具合だ。
 しかし、船舶は固定資産であると同時に売買可能な商品としての性格を併せ持っている。個社ごとにみると、不要になった船舶は他社に売却してバランス・シートを身軽にすることが容易だ。ただ、その船舶がこの世から消滅しない限り、世界の別の場所で稼働を続けることに変わりないため、需給バランスは変わらない。難儀な商売である。

営業利益と設備投資額の推移

(日本郵船+商船三井)
ここで設備投資は、売買可能な船舶の特性を考慮して「固定資産取得額-売却額」で集計している。設備投資額がマイナスになっている年があるのは、それが理由だ。
 さて、2つのデータが見事にリンクしている。設備投資がピークを迎えると、業績は急降下を始める。とても効率的な投資とは言えないのは明らかだ。
 次に、やはり循環株である鉄鋼業のデータを確認してみよう。

営業利益と設備投資額の推移

(新日鉄+住金)
鉄鋼業界の設備投資も好況時にその額が増えて、その後に業績が下降する傾向はあるのだが、相対的に投資の波ははるかになだらかであり、業績の変動は設備投資の非効率というよりは、単に鉄鋼需要の変動を大きく受けている側面が強いように思われる。まあ、好不調の差が激しいことには何ら変わりはない。

 私は長期投資家という聞こえのいいパッケージで偽装した面倒くさがり投資家なので、とてもではないがこのようなハンデを負って長期的な企業価値の増大を望みにくい循環株は投資対象とはならない。お好きな人は業績回復のタイミングを見計らって底値で買いを入れ、大きな値上がり益を狙うのもいいかもしれない。お勧めは出来ないけれど。

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