ファクター別 業績感応度
一部、過去記事の復習にもなるがまとめてみたい。
<為替>
為替変動は業績に効く。みんな知っている。
しかし為替の影響は二つの要素に分けて考えないと解像度が下がってしまう。
円高になると日本企業の利益が減るというのはよくニュースになるが、ここでの為替変動は売上とコストの通貨が一致していないことによる。一般的には輸出型企業がイメージされる。車を作ってアメリカへ輸出する会社がある。売上高はまあ米ドルで受け取るだろう。かかったコストは何か。鉄や銅やガラスや電子機器や電気代やら沢山あって、それらの一部はドルと価格が連動していることだろう。ただ、日本人労働者の人件費は当然円で支払っている。ドルに対して円高になろうが円安になろうが、円建ての人件費は上がったり下がったりしない。一方、ドル円レートは円建ての売上高に直接影響する。円高になると、ドル建て販売価格を値上げしない限り、値下げ販売しているのと同じことになる。だから、売上高利益率が下がる。営業利益率が例えば5%しかないところに5%の円高が押し寄せたら、下手すりゃ赤字転落だ。売上とコストの通貨が一致しないのは輸入型企業も同じだ。こちらは円安でコストが上がり、利益率を圧迫する。
二つ目の要素は、単純な換算差額。在外子会社の損益計算書を連結する際、日本の財務諸表に落とし込むため円換算する必要がある。米国子会社Aで毎年100ドルの利益をあげていても、ドル円レートが100円なら10,000円、110円なら11,000円の利益と違いが生じる。こちらは米国子会社の売上とコストの通貨がともにドルで一致していても逃れられない為替影響だが、一方で利益率の悪化要因とはならない。単なる換算なので、100ドルの利益はどうあがいても赤字転落することはないのだ。よって、業績への深刻度はそれほど大きくないと見ることも出来る。
結論として、為替変動に影響されやすいのは、クロスボーダー取引が多く、顧客への価格転嫁が困難な企業である。次点に、海外拠点の利益貢献度が高い企業。思い当たるの、ありますか。
<販売価格>
販売価格が下がれば利益が減る。これも誰もが知っている。でもその影響度合いはどの企業にとっても等しいわけではない。例えば、売上高利益率が50%の会社があるとしよう。この会社にとって、販売価格の1%下落はノミに刺されるようなものだ。かたや売上高利益率が5%しかない会社があるとする。この会社にとって売価1%ダウンは死活問題に発展する。なにせ、利益が20%も減ってしまうのだから。株価もきっと暴落するだろうね。可哀想な株主たち。
薄利多売による高回転率で高ROIC経営を目指すというのも極めて合理的な戦略だと思うのだけれど(ROIC=売上高利益率×投下資本回転率だから)、売上高利益率が低すぎると、売価ダウン時に回転率でカバーしきれなくなるので要注意だ。
<需要>
需要が減れば利益が減る。またまた誰もが知っている。でもその影響度合いはどの企業にとっても等しいわけじゃない(二回目)。例えば装置産業。特徴と言えばなんだろう。設備投資を行うから、固定比率が高い。設備投資は製造を開始する前に行ってしまっていて、投資後に需要がなくなっても、投資したお金は戻ってこない。一方、単純にモノを仕入れて売っている商社のような変動費型の会社は、需要がなくなれば仕入れるのを止めるだけで、コストの大部分の発生を抑えることが出来る。どちらが需要減に対して業績が敏感に反応するかは明らかだ。
ただし、固定費型の企業の製品は多くの場合高い限界利益率を誇る。限界利益とは売上高から変動費を引いた後に残る利益で、これで高い固定費を回収していくビジネスモデルだ。モノを仕入れて売るだけの企業は固定比が少ない代わりに限界利益も少ないので、需要が爆発しても増益率は知れている。一方、固定費型企業は損益分岐点を超えさえすれば、その高い限界利益が全て税引き前利益にまで取り込めるので、需要が上向きになった時の勢いは凄まじい。こういう企業は投資家もおっかなびっくりで、低いバリュエーションだったりすることも多いので、低評価&好業績のコンビネーションで爆益をもたらしてくれることもある。低バリュエーションが罠でなければいいのだけれど。
<為替>
為替変動は業績に効く。みんな知っている。
しかし為替の影響は二つの要素に分けて考えないと解像度が下がってしまう。
円高になると日本企業の利益が減るというのはよくニュースになるが、ここでの為替変動は売上とコストの通貨が一致していないことによる。一般的には輸出型企業がイメージされる。車を作ってアメリカへ輸出する会社がある。売上高はまあ米ドルで受け取るだろう。かかったコストは何か。鉄や銅やガラスや電子機器や電気代やら沢山あって、それらの一部はドルと価格が連動していることだろう。ただ、日本人労働者の人件費は当然円で支払っている。ドルに対して円高になろうが円安になろうが、円建ての人件費は上がったり下がったりしない。一方、ドル円レートは円建ての売上高に直接影響する。円高になると、ドル建て販売価格を値上げしない限り、値下げ販売しているのと同じことになる。だから、売上高利益率が下がる。営業利益率が例えば5%しかないところに5%の円高が押し寄せたら、下手すりゃ赤字転落だ。売上とコストの通貨が一致しないのは輸入型企業も同じだ。こちらは円安でコストが上がり、利益率を圧迫する。
二つ目の要素は、単純な換算差額。在外子会社の損益計算書を連結する際、日本の財務諸表に落とし込むため円換算する必要がある。米国子会社Aで毎年100ドルの利益をあげていても、ドル円レートが100円なら10,000円、110円なら11,000円の利益と違いが生じる。こちらは米国子会社の売上とコストの通貨がともにドルで一致していても逃れられない為替影響だが、一方で利益率の悪化要因とはならない。単なる換算なので、100ドルの利益はどうあがいても赤字転落することはないのだ。よって、業績への深刻度はそれほど大きくないと見ることも出来る。
結論として、為替変動に影響されやすいのは、クロスボーダー取引が多く、顧客への価格転嫁が困難な企業である。次点に、海外拠点の利益貢献度が高い企業。思い当たるの、ありますか。
<販売価格>
販売価格が下がれば利益が減る。これも誰もが知っている。でもその影響度合いはどの企業にとっても等しいわけではない。例えば、売上高利益率が50%の会社があるとしよう。この会社にとって、販売価格の1%下落はノミに刺されるようなものだ。かたや売上高利益率が5%しかない会社があるとする。この会社にとって売価1%ダウンは死活問題に発展する。なにせ、利益が20%も減ってしまうのだから。株価もきっと暴落するだろうね。可哀想な株主たち。
薄利多売による高回転率で高ROIC経営を目指すというのも極めて合理的な戦略だと思うのだけれど(ROIC=売上高利益率×投下資本回転率だから)、売上高利益率が低すぎると、売価ダウン時に回転率でカバーしきれなくなるので要注意だ。
<需要>
需要が減れば利益が減る。またまた誰もが知っている。でもその影響度合いはどの企業にとっても等しいわけじゃない(二回目)。例えば装置産業。特徴と言えばなんだろう。設備投資を行うから、固定比率が高い。設備投資は製造を開始する前に行ってしまっていて、投資後に需要がなくなっても、投資したお金は戻ってこない。一方、単純にモノを仕入れて売っている商社のような変動費型の会社は、需要がなくなれば仕入れるのを止めるだけで、コストの大部分の発生を抑えることが出来る。どちらが需要減に対して業績が敏感に反応するかは明らかだ。
ただし、固定費型の企業の製品は多くの場合高い限界利益率を誇る。限界利益とは売上高から変動費を引いた後に残る利益で、これで高い固定費を回収していくビジネスモデルだ。モノを仕入れて売るだけの企業は固定比が少ない代わりに限界利益も少ないので、需要が爆発しても増益率は知れている。一方、固定費型企業は損益分岐点を超えさえすれば、その高い限界利益が全て税引き前利益にまで取り込めるので、需要が上向きになった時の勢いは凄まじい。こういう企業は投資家もおっかなびっくりで、低いバリュエーションだったりすることも多いので、低評価&好業績のコンビネーションで爆益をもたらしてくれることもある。低バリュエーションが罠でなければいいのだけれど。
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