2017年8月5日土曜日

ユルユル裁定取引のリターン検証

 株式市場には3年を超える長期チャートではほぼ同じ動きを見せる銘柄群が存在する。
 例えば、

・決済2社 (V,MA)

・医療保険5社 (UNH,AET,HUM,ANTM,CI)

・格付け2社 (MCO,SPGI)

・ダラーストア2社 (DG,DLTR)


 この辺りは株価に強い相関が確認できる。
 おそらく、これらの企業にとっては経営の巧拙が業績に与える余地が少なく、身を置く業界のトレンドが最大の追い風なのだろう。
 するとこんな疑問がわいてくる。
「相関係数が1に近いと思われる上記の会社間で、過去1年のパフォーマンスが最も悪い銘柄に投資することは、その後の価格収斂によってパフォーマンスが上がる必勝パターンとなるのではないか」

 思い立ったが吉日。すぐさまバックデータで検証してみよう。
 取り上げるのは決済2社と医療保険5社だ。


【検証開始】

 面倒なので配当は考慮しない。
 まずはビザとマスターカードから。とりあえず、2社の期末株価と、年間騰落率を数年間並べてみる。本当は過去10年間で比較したかったが、Vの上場は2008年からなので、そこからの比較としている。

 2009年12月末に株を買って今まで放置していた場合、Vは4.6倍、MAは5.0倍。ユルユル裁定取引はこのパフォーマンスを上回ることができるのか。
 一応、改めてルールを説明すると、スタートの2009年12月末に購入するのは騰落率79%のMAに対し、67%と相対的に冴えなかったV。2010年、2011年とVのパフォーマンスが悪いのでそのまま保有し続け、2012年12月末にようやくMAが騰落率でVに劣後するので、Vを売却してMAに乗り換える。こういうことをやっていくわけ。
 この手法を採った場合、最初に投資した100はこういう推移を辿る。


 リターンは5.5倍。Vの4.6倍、MAの5.0倍をやや上回った。
 しかし大切なことを言い忘れたが、このシミュレーション、実は税金を考慮していない。最初に買って放置しておけば課税を繰り延べられるのに対し、ユルユル裁定取引では売却するたびにキャピタルゲインに対し課税され、複利の力を削ぎ落す。
 仮に売却益課税を20%とした場合、ユルユル裁定取引のリターンは5.5倍ではなく、3.9倍にまで落ちる。
 一方、両社株をずっと保有して今売却した場合の税引き後リターンは、Vで3.8倍、MAで4.2倍となる。

<決済2社の結果>
2009年12月末~2017年7月現在の税引後リターン
V:3.8倍MA:4.2倍ユルユル裁定:3.9倍
勝者はMA! 裁定取引失敗。


 続いて医療保険5社だ。こちらは企業数が多いので、裁定効果がよく働きそうな気がする。わざわざ表を貼り付けるのもおっくうなので、いきなり結果発表といこう。

<医療保険5社の結果>
2006年12月末~2017年7月現在の税引後リターン
UNH:3.1倍AET:3.1倍HUM:3.6倍
ANTM:2.1倍CI:3.4倍ユルユル裁定:5.3倍
ユルユル裁定が複利の力を減殺されながらも圧勝!

 なかなか良さそうだ。今はCIを保有しているが、パフォーマンスが突出するようであれば売却して他の医療保険株に乗り換えるのもいいのかもしれない。

2 件のコメント:

  1. ブログいつも楽しみに読ませてもらっています。
    はじめはペアトレードの話かと思ったのですが、どちらかといえばオンラインポートフォリオ選択に近いテーマですね。
    会計、業界分析による銘柄選択からこのようなメカニカルトレードまで、その守備範囲に驚かされます。
    これからもブログ楽しみにしています。

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    1. いつもお読みいただき、ありがとうございます。
      実際こういうのは門外漢のため、私にできるのは1年単位のパフォーマンスを参照しながら乗り換えるレトロな手法がせいぜいです。


      ところで書きながら思ったのですが、年末にパフォーマンス比較というのではなく、乖離率が10%を超えたら銘柄を乗り換える、というような方がよりメカニカルトレードっぽくてパフォーマンスに貢献しそうですね。

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