2017年5月4日木曜日

含み損益を気にしない理由

 私が毎月ポートフォリオを評価額付きで開示しているのは何もその金額を誇示しようとしているわけではない。過去に10倍株を複数購入しただとか自慢したり(もっとも10倍になるまで持っていた株なんてないが…)、そういった自己顕示欲とは多分私は無縁だ。
 開示の理由は主に二つあって、格好良い方から先に言うと、継続的な元本投入と退屈な銘柄からなる凡庸なリターンの組み合わせだけで簡単にそれなりの資産を築くことができるというモデルケースを提示したいと思っている。理論や理屈を語るだけでなく、私自身がその実践者たろうとする株式投資ブロガーとしての矜持の表れであると捉えてもらって構わない。
 もう一つの理由は、ブログにストーリーを導入しようという少しばかり卑しい心によるものだ。みなさん、ストーリー、好きでしょう。人の資産評価額が上に行ったり下に行ったり。頑張れと思うのか、大損しろと願うのかはあなたの心の清らかさ次第なのでしょうが、いずれにせよ無味乾燥な屁理屈ばかりこねられるより少しは楽しいんじゃないだろうか。

 本題とだいぶ離れた話題にスペースを費やしてしまった。当ブログの毎月のポートフォリオ開示に各銘柄の時価は表記されているものの、含み損益率の情報がないのは、別に含み損ばかりで恥ずかしいからとか、逆に巨額の含み益で自慢になってしまうのを心配しているからというわけではもちろんない。タイトルにもある通り、私が含み損益率や額を一切気にしていないからだ。
 投資の初級本によく書いてある言い分としては、「自分の購入価格を意識するあまり、売買判断を誤るな」ということだろうか。アンカー(初期値)効果は投資行動に関する重要な心理的効果であり、この存在を常に意識することは確かに重要だ。
 しかし、私が含み損益率を意識しないのは他にも理由がある。
 通常、含み損益を気にする人は各銘柄の自分のリターンへの貢献度を計りたいのではないかと思う。私もそういったことは把握したい。ところが含み損益の管理は、私のようなインカムゲインとキャピタルゲイン狙いの銘柄が入り組んだポートフォリオを持つ長期保有の投資家にとって、貢献度を計るうえで情けないほど役に立たない。
 一般的に、インカムゲインとキャピタルゲインはトレードオフの関係にある。配当性向が高い企業は資本の蓄積が進まないため、獲得した利益を自らが営む事業へ再投資できず、将来の成長がその分抑えられる。一方、利益を配当に回さず自社株買いや事業投資することを優先する企業は、(一株当たり)利益が増加することで投資家にキャピタルゲインをもたらす。基本的に使途のない資金を眠らせたままにせず、還元か再投資のどちらが自社のステージに最適かを常に検討している米国企業においてこのトレードオフは特に顕著だ。
 含み損益の管理は、トータルリターンの内、キャピタルゲインしか考慮できない。例えば私のポートフォリオの上位を占めるIBMとフィリップモリスはどちらもインカムゲイン型の投資対象で、長年私にかなりの額の配当を供給してきてくれた。含み損益はこの貢献を何も反映しない。かといって、単純に両銘柄の配当総額を記録しておけば良いのかというと、それでも致命的な情報が欠落している。
 両社が私に支払った配当は、私が他の銘柄に投資し、その銘柄がさらに配当したり、株価が上昇することによって、私に複利効果をもたらしてきた。受取配当総額の情報は、単利の情報しか与えてくれない。

 そんなわけで、私は含み損益を気にしておらず、それがゆえにポートフォリオ開示にも時価を記載するのみとしている。私が株価10倍狙いの成長株投資家に鞍替えするようなことがあれば、その時は誇らしげに含み損益率を開示することになるだろう。多分、そんな日は来ないが。

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