2017年5月20日土曜日

フィンテックが既存の金融機関に及ぼす影響

 そこそこ活況を呈している「ご意見・ご質問・ご要望箱」で、前々から記事にしてみたいと思っていたご質問を頂きましたので、この際、Q&Aという形でまとめてみたいと思います。


[Question]
今後既存の銀行、保険やV.MAはどこまでフィンテックの猛追を受けると考えますか?


[Answer]
フィンテックの影響について、銀行・保険組と、クレジットカード決済組は分けて考えた方が良さそうです。

まず銀行の最大の強みは膨大な預金によって確立されており、テクノロジーがどうとかというレベルで覆すことが不可能なものです。どれほど優れたテクノロジーを駆使しても、短期間で大手行と同じ百数十兆円に及ぶ預金残高を積み上げることは出来ません。そして「金を貸して利ざやを得る」という資本主義の根幹をなすビジネスモデルが廃れることもありえない。したがって、銀行にとってのフィンテックは脅威というよりは安全性を高めたりビジネス効率を上げる補完の役割を果たすでしょう。もっとも、非貸出業務の領域(多くの銀行で金利収益と同じくらいの割合になっている)ではフィンテックに浸食される部分も出てくることと思いますが。保険準備金残高の多寡が企業の強さに直結する保険会社も銀行と同様です。
参考記事:ライフネット生命で保険会社を学ぶ

次にビザやマスターカードなどのクレジット決済大手に対するフィンテックです。カード会社は金融というよりテクノロジーとネットワークに強みがあるので、テクノロジーがその名の由来となっているフィンテックは確かに将来的に競合として立ちはだかりそうな気がしなくもありません。しかし、PayPalやAlipay、スクエアなどをフィンテックの文脈で語っていいのか定かではないですが、これらの新興決済勢力が既存のカード会社を死に追いやるとまでは考えていません。なぜなら、プラスチックカードを持ち歩いて店頭で提示する行為がスマホ決済に取って代わったところで、我々の利便性は大きく向上したりはしないからです。利便性を訴えてシェアを取ることが難しいのであれば泥臭く価格で勝つしかありません。これから決済市場を支配しようと目論むフィンテック勢は、小売店などに決済手数料の大幅なディスカウントを提示しなければシェアを取れない。その圧縮された利幅を前提にして、自力で決済ネットワークを広げていく資金力と潜在顧客基盤を持つ企業は非常に限られていると思います。

その会社とはどこになるでしょう。
Apple Payについて言えば、決済ネットワークはVやMAのものを使用し、自身はほとんど手数料を得ていません。アップルはApple PayをiPhoneに消費者を縛り付けるためのツールとして位置付けています。つまりApple Payは既存カード会社の脅威とはならない。Line PayもJCBのネットワークを使用しており、決済サービスはあくまで自社のSNSサービスに利用者を囲い込むために提供しているように感じます。
次に既に日本人の想像をはるかに超えるキャッシュレス化が進んでいる中国勢はどうでしょう。アリババのAlipay、中国版LINEを提供するテンセントのWeChat Paymentは、銀聯カードと並んで中国国内の決済を完全に牛耳っており、しかも自前の決済ネットワークを構築しています。タクシーでもコンビニでもスマホで簡単に決済できる。そういう社会が中国では実現しているのです。まさに大手カード決済会社にとって脅威としか言い様のない現実です。ただ、両社のこれまでのサービスや企業動向から考えると、中国を超えて世界標準になる予感はしません。アリババもテンセントも、インターネットショッピングサイトやSNSという既存サービスとのシナジーと圧倒的知名度を最大限活用したからこそ決済サービス網を急速に広げられたと思いますが、例えば北米の小売業者が自国で目立ったサービスを提供していないアリババやテンセントの決済網をこぞって採用するイメージが湧いてきません。

将来的に自力で決済ネットワークを構築し、割安な手数料でVやMAを脅かすほどのシェアを獲得していく可能性のある企業の最右翼はやはりアマゾンになるでしょう。アマゾンは世界中の人間に知られていて、その小売事業は決済サービスとの相性が良いです。アマゾンはアップルほど空気を読みません。アマゾンはフェイスブックほど既存事業との補完関係を重視しません。アマゾンにはベンチャー精神と同時に覇道の気質があります。そしてアマゾンは目先の利益にこだわらず、値引きが得意です。

あとはブロックチェーンですか。決済の安全性を担保する技術としてのブロックチェーンは今後、大手企業に取り入れられていく可能性が非常に高いと考えていますが、ビットコインなどの仮想通貨とセットで語られる場合のブロックチェーンは、カード会社にとってさほど脅威とは思えません。仮想通貨は値動きが激しいため価値保存手段として致命的な欠点を有しており、それは今後も変わらないでしょう。

以上が私の見解です。私は既存カード会社のビジネスモデルの将来性についてそれほど大きく危惧していません。すでに述べた通り、競争が起こるとしても、テクノロジーの戦いではなく、単なる値引き合戦が繰り広げられるだけだと考えるからです。

2 件のコメント:

  1. 面白いテーマですね。わたしがおもったことはやっぱアマゾンクソだわ(顧客以外には)ってことですかね。とおもいつつ顧客としてアマゾンに屈服してるよわいわたし。

    返信削除
    返信
    1. カード会社に対する驚異の筆頭としてアマゾンを挙げたものの、今さら決済関係を攻めたところで労多くして実り少なく、しかもイノベーティブでもないですから、今やってる無人店舗とかもっと面白そうな領域に突っ走ってもらいたいですね。

      削除