アラガン(AGN)の事業内容

 アラガン・ジャパンのサイトの言を借りれば、アラガンは「アイケア、神経科、皮膚科、美容医療、形成外科、乳腺外科、泌尿器科、消化器科、婦人科など多岐に渡る領域で有力製品を抱えるグローバルヘルスケア・カンパニー」だ。
 実際、アラガンの売上高構成は医療領域、製品構成ともに幅広く分散されている。



 創業領域である眼科系が最も比重が高く売上の1/4を占め、ドライアイ治療薬のレスタシスがその王冠の宝玉(クラウン・ジュエル)だ。
 そしてもう一つのクラウン・ジュエルがアラガンの代名詞ともなっているボトックス。一般的にはしわ取り剤用途として有名だが、美容領域以外にも、脳性麻痺や多汗症治療にも使用され、実はそちらの用途の方が美容部門より大きい。ボトックスはボツリヌス毒素から有効成分を抽出した製剤であり、製造が非常に複雑と言われている。また美容部門においてはソニーのウォークマンのように、固有名詞でありながらしわ取り剤を総称する一般名詞のような扱いになっているほどのブランド力も相まって、ジェネリック薬への耐性が非常に強く、現在でも2ケタ成長を継続している。アラガンの最大の強みと言って間違いない。

 黄色でハイライトしたアルツハイマー治療薬のナメンダなど、ジェネリック薬の攻勢を受けて売上が急減している製品があるものの、アラガンの保有する製品ラインナップはボトックスに限らず軒並み高成長を続けている。最新のプレゼンテーション資料を見てみよう。


 ナメンダXR(及びナメンダIR)と、アサコールを除けば、ほぼ全ての主要製品が前年対比で2ケタ成長を遂げている。また、65の新薬パイプラインが走っている。自社で開発しているものもあるし、バイオベンチャーに資金を提供しているものもある。当社はオープン・イノベーション型の研究開発を標榜しており、必ずしも自社開発にこだわっていない。外にいい技術があれば、早い段階で将来の権利を獲得することに積極的なのだ。その点で、製薬会社でもあり、医薬業界のベンチャー・キャピタル的な側面を併せ持つ。

 アラガンは株主還元の代わりに成長によって株主に報いると言ってきたが、2016年Q3決算発表時にテバへのジェネリック事業売却によって得た資金により自社株買いの増枠と、2017年度からの配当開始を宣言した。毎年増配するとも言っている。
 Q3決算がアナリスト予想を下回ったこともあり、市場の反応は微妙なものだった。確かに自他ともに認める成長企業が株主還元に舵を切るというのであれば、成長鈍化を疑うのも無理はないかもしれない。糖尿病領域で圧倒的な力を持つノボ・ノルディスクが薬価抑制によって成長見通しを引き下げ株価が暴落したように、ブランド力による強力なプライシング・パワーを持つアラガンだからこそ、近年の薬価引き下げ圧力は成長にとって致命傷にもなり得る。
 政治の動向に注意は払いつつ、「アラガン以上に優れた投資先は存在しない」と言い切るサンダースCEOの言葉をまずは素直に信じてみようと私は思う。自社株買い増枠を考えると、最近の株価低迷は流通株数減少に貢献するため真に素晴らしいことだ。

コメント

  1. 最近,再び株価が下落していますが,何が原因と見ていますか?

    返信削除
    返信
    1. 複数の大型買収を繰り返して、実際、バリアントと違って財務の健全性を保ちつつマーケットでのプレゼンスを高めてきた手腕が評価されて、ファイザーからの買収提案前まではいかにもヘッジファンド好みの銘柄となっていましたが、直近数四半期の決算は冴えず、膨れ上がった期待が急速にしぼんでいる局面ではないでしょうか。

      いつまでたっても償却後の損益が黒字化しないことから、私も近々のれんと無形資産の減損はあり得るのではないかと見ています。
      また「オープンサイエンス」型と銘打たれたベンチャー・キャピタル的なパイプライン拡充手法についても、私はその有効性を確信するに至っていません。
      というわけで、実はこの銘柄に関してはあまり自信があるわけではないのですが、現有の製品ラインナップの魅力に比して、予想PERは12倍を切っていますので、成り行きを静かに見守ることに決めています。

      削除
  2. 企業買収の連発,集団訴訟,大型投資家の撤退,など面白くないですよね...
    P.S. 書き忘れましたが,記事は力作で参考になりました.
    K.

    返信削除
    返信
    1. 決定的な悪材料がないのに下げ続けるのは、ギリアドみたいな感じですかね。
      どちらも自社株買いをしているので、投資家が過度に悲観的になっているだけであれば長期的には歓迎すべきことですが、市場が正しいことも多いので、油断は禁物と気を引き締めています。

      削除

コメントを投稿