ROICについて(前編)
今日は教科書的な説明だから、ROICについて知ってる人は読み飛ばして大丈夫です。
ROIC : Return On Invested Capital
直訳して投下資本利益率。どんなものかというと、投下資本に対する利益率を表す指標。ROAと似たようなもんです。
似てるならROAだけで十分じゃないかと思われるかもしれないけれど、企業経営を評価する時の指標として、同じ資本利益率なら、ROAよりROICの方が理論的に納得感のあるものだと私は思ってる。
どうしてそう思うのかというと、比較対象がはっきりしているからだ。投下資本利益率を評価するには、投下資本コストと比べてやればよい。投下資本コストを下回る投下資本利益率はダメだよねっていう当たり前の評価が持ち込めるわけ。ROAの場合、総資産コストってのが算出しがたいので、単品では論理的な評価が出来ない。
投下資本利益率と投下資本コスト、こいつらを比べればいいのはわかったが、じゃあ「投下資本」って何なんだ?
バランスシートを頭に思い浮かべてください。左側に資産。棚卸資産などの運転資本やら固定資産やらなんやらがあります。もちろん調達してきたお金で買ってきて、B/Sの左側に記帳されているのだけど、ROICの世界観では企業の利益の源泉はこれらの資産だということになっている。製造業なんかまさにその世界観にばっちり当てはまりますね。どんなに優秀な人材が揃っているとしても、鉄鋼会社が高炉なしに利益を上げられますかというお話。
では、B/Sの左側にある資産を購入するための資金はどうやって調達したのかというと、バランスシートの右側に答えがあって、方法は二種類存在する。
一つは銀行から借りる。借入金と呼びましょう。
もう一つは投資家に募る。あるいは過去の事業利益の蓄積から捻出する。株主資本と呼びましょう。
借入金にはコストがかかります。銀行に支払う利息がそれ。ちょっと付け加えると、支払利息は税務上も費用と認められるので、課税所得を減らして税金を節約する効果がある。負債の節税効果ってやつです。だから借入コストは
借入コスト = 利子率 × (1-法人税率)
で表せます。
株主資本にも同じくコストがかかります。なんだろね。配当金かな? もちろん違う。株主資本コストは現金支払いと関係ない。株式市場に身を置く以上、株主の期待する利益に応えることが責務であって、その期待そのものがコストだ。早い話が、ROE上げてよねってこと。ROEが低けりゃ株式益回りを確保するために投資家はPBRを低くするし、ROEが高けりゃPBRは高くなる。投資家は今のROEを維持向上させろと常に思ってるわけだ。会社はこの期待を裏切るわけにはいかない。だからコスト。一般的に株主資本コストは7%前後と言われている。我々もよくPER15倍前後を基準に考えることが多いと思うけど、PER15倍って、株式益回りに換算すると7%弱だからね。
ここまでくると、投下資本コストが計算できそうになってきた。ある企業が投下資本を借入金:株主資本=2:1の割合で調達しているとする。借入コストを0.5%、株主資本コストを7%としておきましょうか。すると、加重平均コストは2.7%と算出される。これこそが投下資本にかかわるコスト。教科書的にはWACC(加重平均資本コスト)と呼びます。
ROICはWACCと比べてはじめて真価を発揮する。理論的にも大変分かりやすい。"税引き後"の"資本コスト"と比較するのだから、ROICの分子に使う利益は、"資本コスト控除前"で"税引き後"の利益でなければイコールフッティングにならない。一般的にはNOPAT、すなわち税引き後営業利益が使われます。これなら資本コストの一部である支払利息が混入していないから。
こんな便利なROIC、ぜひとも事業部の評価尺度として活用したいと思っても不思議じゃない。でも問題がある。分子の利益は事業部採算を出せるが、分母の投下資本は借入金と株主資本で構成されているので、どの事業部にどれだけの投下資本が帰属しているかを割り出すのは困難を極めるのだ。
ここんところの落とし込みを、次回に解説します。
ROIC : Return On Invested Capital
直訳して投下資本利益率。どんなものかというと、投下資本に対する利益率を表す指標。ROAと似たようなもんです。
似てるならROAだけで十分じゃないかと思われるかもしれないけれど、企業経営を評価する時の指標として、同じ資本利益率なら、ROAよりROICの方が理論的に納得感のあるものだと私は思ってる。
どうしてそう思うのかというと、比較対象がはっきりしているからだ。投下資本利益率を評価するには、投下資本コストと比べてやればよい。投下資本コストを下回る投下資本利益率はダメだよねっていう当たり前の評価が持ち込めるわけ。ROAの場合、総資産コストってのが算出しがたいので、単品では論理的な評価が出来ない。
投下資本利益率と投下資本コスト、こいつらを比べればいいのはわかったが、じゃあ「投下資本」って何なんだ?
バランスシートを頭に思い浮かべてください。左側に資産。棚卸資産などの運転資本やら固定資産やらなんやらがあります。もちろん調達してきたお金で買ってきて、B/Sの左側に記帳されているのだけど、ROICの世界観では企業の利益の源泉はこれらの資産だということになっている。製造業なんかまさにその世界観にばっちり当てはまりますね。どんなに優秀な人材が揃っているとしても、鉄鋼会社が高炉なしに利益を上げられますかというお話。
では、B/Sの左側にある資産を購入するための資金はどうやって調達したのかというと、バランスシートの右側に答えがあって、方法は二種類存在する。
一つは銀行から借りる。借入金と呼びましょう。
もう一つは投資家に募る。あるいは過去の事業利益の蓄積から捻出する。株主資本と呼びましょう。
借入金にはコストがかかります。銀行に支払う利息がそれ。ちょっと付け加えると、支払利息は税務上も費用と認められるので、課税所得を減らして税金を節約する効果がある。負債の節税効果ってやつです。だから借入コストは
借入コスト = 利子率 × (1-法人税率)
で表せます。
株主資本にも同じくコストがかかります。なんだろね。配当金かな? もちろん違う。株主資本コストは現金支払いと関係ない。株式市場に身を置く以上、株主の期待する利益に応えることが責務であって、その期待そのものがコストだ。早い話が、ROE上げてよねってこと。ROEが低けりゃ株式益回りを確保するために投資家はPBRを低くするし、ROEが高けりゃPBRは高くなる。投資家は今のROEを維持向上させろと常に思ってるわけだ。会社はこの期待を裏切るわけにはいかない。だからコスト。一般的に株主資本コストは7%前後と言われている。我々もよくPER15倍前後を基準に考えることが多いと思うけど、PER15倍って、株式益回りに換算すると7%弱だからね。
ここまでくると、投下資本コストが計算できそうになってきた。ある企業が投下資本を借入金:株主資本=2:1の割合で調達しているとする。借入コストを0.5%、株主資本コストを7%としておきましょうか。すると、加重平均コストは2.7%と算出される。これこそが投下資本にかかわるコスト。教科書的にはWACC(加重平均資本コスト)と呼びます。
ROICはWACCと比べてはじめて真価を発揮する。理論的にも大変分かりやすい。"税引き後"の"資本コスト"と比較するのだから、ROICの分子に使う利益は、"資本コスト控除前"で"税引き後"の利益でなければイコールフッティングにならない。一般的にはNOPAT、すなわち税引き後営業利益が使われます。これなら資本コストの一部である支払利息が混入していないから。
こんな便利なROIC、ぜひとも事業部の評価尺度として活用したいと思っても不思議じゃない。でも問題がある。分子の利益は事業部採算を出せるが、分母の投下資本は借入金と株主資本で構成されているので、どの事業部にどれだけの投下資本が帰属しているかを割り出すのは困難を極めるのだ。
ここんところの落とし込みを、次回に解説します。
ある企業が投下資本を借入金:投下資本=2:1の割合で調達しているとする。借入コストを0.5%、株主資本コストを7%としておきましょうか。すると、加重平均コストは3.3%と算出される。 とありますがこの3.3%の計算式を教えて頂けませんか?宜しくお願い致します。
返信削除計算したら2.7%でしたね。失礼しました。記事内容も訂正させていただきます。
削除(計算式はご存知という前提で省略いたします)
ありがとうございます。納得がいきました。
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