マシ×マシの破壊力 -アリスタ・ネットワークス(ANET)の場合-

 最初に、この記事における「マシ」を定義する。構えなくても、一言で済む。それはボリュームの増加だ。
 これを踏まえて「マシ×マシ」を考える。紛らわしいので、一つ目のマシをα、二つ目のマシをβと呼ぶ。αを市場規模の拡大、βをシェア上昇と定義すると、「マシ×マシ」の意味が伝わるのではないかと思う。市場規模が拡大して、かつその中でシェアまで上昇しているのであれば、その企業の成長速度はきっと速いことだろう。
 具体的にイメージするため、ここからは固有名詞を登場させる。アリスタ・ネットワークス(ANET)の話に移ろう。一時的に「マシ×マシ」の話題から離れるが、辛抱して欲しい。

 アリスタが提供するのは、データセンター内におけるデータ転送のハブとなるイーサネットスイッチだ。競合には言わずと知れた巨人シスコ・システムズがおり、アリスタはオープンソースのネットワークOSと、汎用チップを用いたコストパフォーマンスに優れるハードウェアスイッチの提供するという戦略が強みとなっている。
 シスコのスイッチがハードとソフトが一体化していて顧客が中をいじれないブラックボックス型なのに対し、アリスタのスイッチはブロードコム製などの汎用チップなどを組み合わせて、独自のソフトも載せずに販売する。ハードとソフトが分離調達でき、顧客自身でソフトをカスタマイズできるため、自由度が高い。この特徴はブラックボックスに対してホワイトボックスとも呼ばれている。先に述べた通りアリスタのスイッチは廉価だし、コードが複雑でないのでデータ転送に伴う電力使用量も抑えられる。データセンター運営者にとってこうした即物的なメリットは大変魅力的だ。平たく言うと、シスコが押し付ける独自仕様にロックインされていた顧客を、オープンなソフトウェアとハードウェアによって解放し、コストパフォーマンスを上げる、という売り文句を持っている。当然、アリスタはシスコから猛烈な勢いでシェアを奪っている。

 シェアを奪う。冒頭に出てきたやつだ。確かβと呼ぶことにしたのだった。市場規模の拡大(α)とシェア増大(β)が相乗効果で追い風となっているので、アリスタはしばらく強いだろうね、というのが要するにこの記事の主旨だ。
 しかも、アリスタの「マシ×マシ」はの一方である市場規模の拡大は、もう一つ上の階層にある「マシ×マシ」によってもサポートされている。というのも、アリスタの顧客であるクラウド・データセンター事業者自身が、データ通信量の増大(α)と、企業内サーバーなどオンプレミス型データセンターからのシェア奪取(β)による「マシ×マシ」状態にある。


 定性面は何となく説得力がありそうだけど、業績はその通りになってるのかよというと、なってる。ここ1年でEPSは2倍だ。
 株価も2倍になっていて、PERは変わっていない。
 PERはいくつかって? 今なら大変お安く、実績ベースで45倍となっております。

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