究極のインサイダーが自社株買いをする
税金を無視すれば、配当と自社株買いは同じだ。ただし、投資家が配当を同じ銘柄に再投資する場合に限るが。
どういうことかというと、自社株買いは投資先企業が問答無用で自社株に再投資してしまうのに対し、配当を受け取った投資家はバリュエーションを勘案してそのお金を他の銘柄に投資することができる。有利な投資機会が配当元の銘柄以外にあるのであれば、配当は自社株買いよりも優れた株主還元策と言える。
しかし、企業が自社のバリューエションを十分勘案しながら慎重に自社株買いを実施するとしたらどうだろう。究極のインサイダー取引による超過リターンが投資家の手に届けられるのではないか。
私は退屈していた。主力銘柄のフットロッカー(FL)は足元で株価が悲惨なほど下げているが、これがこのままズルズル下がろうと、市場が考え直して上げに転じようと、実際のところ私にとっては何の関係もない。次の決算やガイダンスで事業が劣化しているのか否かを確認しないことには"本源的価値"とやらにジャッジを下せないため、私は数値が公表されるのを身じろぎせずに待つしかないからだ。
そしてFLのキャッシュフロー計算書を眺めていて気になることがあった。四半期ごとの自社株買いに大きな波があるのだ。具体的にはこんな感じだ。
フットロッカー自社株買い推移
16-1Q $ 88mil
16-2Q $188mil
16-3Q $ 76mil
16-4Q $ 80mil
17-1Q $ 38mil
16-2Qは極端に多く、17-1Qは少ない。
最初はフリーキャッシュフローの額に合わせて増減させているのかと思ったが、そうでないことはすぐにわかった。例えば16-2QのFCFは$91milであり、自社株買い$188milはその2倍に相当する。一方、自社株買いが$38milと少ない17-1QのFCFは$84milで、こちらの還元額はFCFを大きく下回っている。
そこでピンときた。自社株買いの額と相関があるのは、おそらく株価だと。
グラフ内に吹き出しでコメントも付けているのでもはや解説も不要だろう。フットロッカーは明らかに自社株が安いと思われるときに大量の自社株買いを実施している。おそらく、株価が絶賛急落中の17-2Qも同じだろう。
自社のコントロール外の事象によって業績がじり貧になっていくこともあるので、いくらインサイダー情報を持っていても必ず儲かるわけではないのだが、バリュエーション無視で機械的に自社株買いを行う企業よりも優れた投資効率を発揮できる可能性はかなり高いと思う。
同じくポートフォリオ上位のフィリップモリスは「ドル高のため今は自社株買いを実施するタイミングではない」と言っていて、実際に2015年度からそれまで積極的だった自社株買いを停止している。(筆者注:フィリップモリスは100%米国外で事業を営んでいるので利益の全ては米ドル以外の外貨だ。したがって、米国市場に上場されている自社株を買い付けるということは、PMが割高だと考えている米ドルを購入することに等しい)
素直に受け取れば、自社のバリューエションを意識した還元施策だと好感を抱くところだが、同社の決算書を確認すると、単に配当支払いでフリーキャッシュフローを食いつぶしてしまっているため、追加還元の余力がないだけだということが分かる。ここらへんは実際に数値を確認していくしかない。
こんな感じで、私が企業に継続的に投資を続ける一方、企業自身も自分の株価が安いときに上手に買い付けて私の持分割合を増やしてくれることをイメージしながら待つのであれば、流れる時間も無為ではない。
最後にフットロッカーの決算を待つまでの暇つぶし用として私が定期的に見ている動画を貼り付けておく。これを見るとスニーカーフォーエバーという気分になって、良くも悪くも銘柄への思い入れが増すのだ。バイアスを植え付ける危険な行為なので、お勧めはしない。
どういうことかというと、自社株買いは投資先企業が問答無用で自社株に再投資してしまうのに対し、配当を受け取った投資家はバリュエーションを勘案してそのお金を他の銘柄に投資することができる。有利な投資機会が配当元の銘柄以外にあるのであれば、配当は自社株買いよりも優れた株主還元策と言える。
しかし、企業が自社のバリューエションを十分勘案しながら慎重に自社株買いを実施するとしたらどうだろう。究極のインサイダー取引による超過リターンが投資家の手に届けられるのではないか。
私は退屈していた。主力銘柄のフットロッカー(FL)は足元で株価が悲惨なほど下げているが、これがこのままズルズル下がろうと、市場が考え直して上げに転じようと、実際のところ私にとっては何の関係もない。次の決算やガイダンスで事業が劣化しているのか否かを確認しないことには"本源的価値"とやらにジャッジを下せないため、私は数値が公表されるのを身じろぎせずに待つしかないからだ。
そしてFLのキャッシュフロー計算書を眺めていて気になることがあった。四半期ごとの自社株買いに大きな波があるのだ。具体的にはこんな感じだ。
フットロッカー自社株買い推移
16-1Q $ 88mil
16-2Q $188mil
16-3Q $ 76mil
16-4Q $ 80mil
17-1Q $ 38mil
16-2Qは極端に多く、17-1Qは少ない。
最初はフリーキャッシュフローの額に合わせて増減させているのかと思ったが、そうでないことはすぐにわかった。例えば16-2QのFCFは$91milであり、自社株買い$188milはその2倍に相当する。一方、自社株買いが$38milと少ない17-1QのFCFは$84milで、こちらの還元額はFCFを大きく下回っている。
そこでピンときた。自社株買いの額と相関があるのは、おそらく株価だと。
フットロッカーの自社株買いと株価の関係
グラフ内に吹き出しでコメントも付けているのでもはや解説も不要だろう。フットロッカーは明らかに自社株が安いと思われるときに大量の自社株買いを実施している。おそらく、株価が絶賛急落中の17-2Qも同じだろう。
自社のコントロール外の事象によって業績がじり貧になっていくこともあるので、いくらインサイダー情報を持っていても必ず儲かるわけではないのだが、バリュエーション無視で機械的に自社株買いを行う企業よりも優れた投資効率を発揮できる可能性はかなり高いと思う。
同じくポートフォリオ上位のフィリップモリスは「ドル高のため今は自社株買いを実施するタイミングではない」と言っていて、実際に2015年度からそれまで積極的だった自社株買いを停止している。(筆者注:フィリップモリスは100%米国外で事業を営んでいるので利益の全ては米ドル以外の外貨だ。したがって、米国市場に上場されている自社株を買い付けるということは、PMが割高だと考えている米ドルを購入することに等しい)
素直に受け取れば、自社のバリューエションを意識した還元施策だと好感を抱くところだが、同社の決算書を確認すると、単に配当支払いでフリーキャッシュフローを食いつぶしてしまっているため、追加還元の余力がないだけだということが分かる。ここらへんは実際に数値を確認していくしかない。
こんな感じで、私が企業に継続的に投資を続ける一方、企業自身も自分の株価が安いときに上手に買い付けて私の持分割合を増やしてくれることをイメージしながら待つのであれば、流れる時間も無為ではない。
最後にフットロッカーの決算を待つまでの暇つぶし用として私が定期的に見ている動画を貼り付けておく。これを見るとスニーカーフォーエバーという気分になって、良くも悪くも銘柄への思い入れが増すのだ。バイアスを植え付ける危険な行為なので、お勧めはしない。
理系の大学生です。
返信削除ネイティブダンサーのPVのステップ、実はイカサマダンスだそうです。
鉄棒にぶら下がった状態で足元だけダンスをすると、体重が乗らず軽やかになるのだとか。
昔、雑誌のインタビューか何かで知りました。
イカサマと言いましたが、面白い工夫だと感心したものです。
就職活動の中、このブログを時たま参考にしています。
投資の経験はありませんが、プレノンさんの記事が、様々なシーンで学習のきっかけになっています。
貴重な裏話、ありがとうございました。鉄棒にぶら下がってのステップだとは知りませんでした。あの足取りの魅力は、重力を感じさせない軽さ、そして速度に依っている部分が大きいので、工夫として秀逸だと思います。速度感を出すために、多分、1秒間に何フレームか抜いてもいるんじゃないかな。
削除勉強熱心な方のようなので心配いらなさそうですが、就職活動、頑張ってください。
私も若い方に読まれていると思うと、大変やりがいを感じます。(このブログの読者層は30代以降と男性に極端に集中しているのです。)
フットロッカー別注とか言って、過去には多くの名作が数量限定で発売され、それに群がったものです。
返信削除やはり高かったので、私は結局買わずでしたが、未だジョーダンモデルが好きで、オークションとかでやむなくプレミア価格で買って喜んでます。
そういうことで私もフットロッカーを所有しているのですが、最近の急落を嫌気してそうこうしてると、このブログに遭遇しました。
とても、いい記事ばかりでついすべて読み込んでしまいました。
更新をとても楽しみにしています。
スニーカー販売と言えども実店舗はオンラインからの侵食を受けるのか、今後数四半期の決算はいつも以上に注目ですね。私はスニーカーフリークではないのですが、フットロッカーの数値に魅せられている者の一人です。
削除今後とも面白い記事を書いていくつもりですのでよろしくお願いします。
配当に比べ自社株買いは注目度が小さいような気がしています。「自社株買い頂きました」という記事が「配当受け取りました」という記事と同じくらい四半期ごとに世の投資ブログに現れてもおかしくないです。例えば「FCFの2倍、自社株買い頂きました」というのはニュースバリューがありますね。
返信削除やっぱり自分の口座に直接入金されるわけではないというただ一点の違いにおいて、行動経済学的観点から自社株買いは配当に敗北するしかない運命にあるかなとも思います。私も理屈では同じとわかっているけど、やっぱり配当通知を受け取ると結構嬉しいですから。
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