2016年8月5日金曜日

子供投資教室「ワールドHDの実績数値を用いた損益分析」

<参考記事>
 子供投資教室「株価は何で決まる?」
 新事業の採算プランを立ててみよう


 どうもお久しぶり。株式市場は最近ひどく暴れているようですが、みなさん、株価の変動を楽しんでいますか。温かい気持ちで受け止めていますか。こういうのは経験を積んで初めて会得する心境という面もあるかもしれませんので、今はとにかく株式投資に参加し続けるだけで大勝利だと思います。

 さて、今日は先日とうって変わって実践編です。私が持っているワールドホールディングスという会社があるのですが、そこの不動産セグメントの数値を見ていたら、損益分岐点売上高を算出するのにぴったりの設問になりそうだったので、君たちにちょっとやってもらおうと考えつきました。
 この前は精神論みたいなことをお話ししましたが、株式投資においてはこういう愚直な計算というのも案外馬鹿にできないので、我慢して付き合ってください。

 では、まず数値からみてもらいましょう。


ワールドホールディングス 不動産セグメント
業績数値

16年度1Q
 売上高 87.2億円
 セグメント利益 9.8億円

16年度2Q
 売上高 46.3億円
 セグメント利益 0.5億円


 ここから何を読み取れますか?
 はい、売上高が全然違う。そうですね。この会社はマンションを売っているみたいなので、販売タイミングで結構振れるみたいです。
 他にはありますか。はい、利益率が全然違う。そうですね、正解とも言えるし、そうでないとも言えます。多分、君は16年度1Qのセグメント利益率が11%(9.8÷87.2)、16年度2Qは1%(0.5÷46.3)だからそう答えたんでしょう。それはその通り。だけど、今回はここから一歩踏み込んでみましょう。


【設問】
ワールドホールディングスの不動産セグメントにおける
 ・限界利益率
 ・固定費
 ・損益分岐点売上高
を実績数値から推定せよ。


 おさらいとして、限界利益というのは売上に比例して増加する利益のことです。この事例で言うと、マンション販売価格から、土地仕入れ高と建設費という変動費を引いた後に残る利益になります。固定費というのは、売上があってもなくても発生する費用のことです。営業マンの人件費なんかが代表的なものになるんじゃないでしょうか。詳しくは冒頭にリンクを貼った「新事業の採算プランを立ててみよう」にあります。
 それでは少し考える時間を設けますので、計算に取り掛かってください。



(子供たちの思考時間)



 では解答に参りましょう。採点は結構です。本質は答え合わせにあるわけじゃないですから。
 まず、損益分岐点売上高はどのように計算されるのでしょうか。
「損益分岐点売上高 = 固定費 ÷ 限界利益率」
となります。
 ということは、この設問は限界利益率と固定費の算出がキーになりますね。
 ここで限界利益率をx、固定費をyとしましょう。
 セグメント利益は限界利益から固定費を引いた後に残る利益ですので、1Qおよび2Qの数値は次の計算式に落とし込むことができます。
「売上高×限界利益率-固定費=セグメント利益」

16年度1Q
 87.2x - y = 9.8
16年度2Q
 46.3x - y = 0.5


 連立方程式になりました。この解き方は……説明するまでもないですね。
 x = 0.23
 y = 10

 つまり、限界利益率 23%、固定費は四半期で10億円なので、年間40億円ということになります。これで損益分岐点売上高が計算できます。
 40 ÷ 0.23 = 174億円

<解答>
 限界利益率:23%
 固定費:40億円/年
 損益分岐点売上高:174億円/年

 いかがでしょう。こういう試算も、いつかは何かの役に立つと思います。
 例えば、ワールドホールディングスが公表している不動産セグメントの年間予算の妥当性も検証できる。会社はこう言っています。

16年度 年間予想
 売上高 371億円
 セグメント利益 39億円

 これに先ほどの限界利益率と固定費を当てはめてみましょう。

 371億円×23% - 40億円 = 45億円

 会社は利益予想を39億円と言っているのに対し、この試算では45億円になりました。
 この差が生じている要因は何でしょう。
 うん、会社予想が保守的すぎることが考えられますね。
 他には、1Qおよび2Q実績に特殊要因が入り込んでいて、限界利益率か固定費の試算値をゆがめている可能性があります。特殊要因というのは、利益率の高いマンション販売が1Qおよび2Qにあったため、限界利益が平均より高かったとか、固定費が下期により多く発生するとか、そういうことが考えられます。


 投資とは関係なかったじゃないかって? そう言わないで。業績数値が絡むことで、投資と無関係なことなんて何一つありません。
 今回はこれにておしまい。また機会があれば、この教室は不定期に開催します。懲りずに参加してくださいね。

2 件のコメント:

  1. 不動産やマンションディベロッパーは限界利益率が大きく変動するので、ちょっとこの例は投資家目線からすると後追い投資でともすれば悪質な子供騙しと捉えかねませんが、実践的かどうかは横に置くとして、とても分かり易くて良い授業だったと思います。

    こういう授業を義務教育として中学校でも教えれば良いんですけどね。

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    1. そういう注意書きを目立つようにしなかったのは失策でした。ただ、子供たちも賢いので分かってくれると信じます...

      デベロッパーに限らず、損益分岐点売上高分析なんて現実には全く役に立たない代物ですが、それでも考え方は重要なんですよね。不思議なもんです。やはりそういう注釈をつけるべきでした。

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