[ 銘柄分析 ] ウォルト・ディズニー (DIS) -キャッシュフロー・B/S編-
前回の投稿。
[ 銘柄分析 ] Walt Disney -事業環境・P/L編-
ウォルト・ディズニー社は、売上・利益面で最大規模のケーブルネットワーク事業が数々の逆風に晒されつつも、強力なコンテンツが揃っているため、映画事業、テーマパーク事業、グッズ販売事業の飛躍的な成長が見込まれるので、予想PER15倍くらいの今ならお買い得じゃないかな、というのが前回の大まかな概要だった。
そして今回はキャッシュフローとバランス・シートに目を通してみる。
Walt Disney Cash Flow
すぐ後に2011年度末と2015年度末のバランスシート比較表も載せるので、C/F表を見てB/Sがどのようになるのか想像しながら見ると良い訓練になると思う。
上記の過去4年のキャッシュフローにおいて、個人的に注目すべき点を以下に列挙してみる。
① 減価償却費と設備投資のバランス
2,5行目
全ての年で設備投資額が償却費を上回っている。B/S的にはこれにより有形無形固定資産はその差額分だけ増加する。
設備投資の8割、償却費の7割以上はParks and Resorts部門に対するものだ。近年は上海ディズニーランドの建設、ディズニーワールド、香港ディズニーランドの拡張などに設備投資費用が投入された。前回のP/L編で確認した通り、拡張投資は同セグメントの売上・利益に確実に結びついているようだ。
② 安定して増加する営業CFとフリーキャッシュフロー(FCF)
4,8行目
償却費を上回る投資が継続的にある企業なら、FCFがマイナスになるなんてのは良くあることだ。しかし、ディズニーのFCFは一度もマイナスに沈んでいないどころか、一貫して増加し続けてさえいる。キャッシュの最大の源泉は「利益」だ。当期利益をベースとする豊富かつ持続成長する営業CFが巨大な投資額を悠々カバーしている。
③ 総還元性向
1,8,9,10,11行目
4年累計の当期純利益29,665百万$に対して、配当+自社株買い合計26,695百万$。総還元性向は90%ということになり、REIT並みの還元率だ。FCFに対する還元性向は100%を超えており、足りない分は借入金でまかなっている。
人によって色々な感想が出てくるものと思うが、この数値を見て私が感じるのは、本物の高収益企業が「成長のため」という名目で増資を行うのは余程のことがない限り許容されるべきではないということだ。高収益がもたらすキャッシュフロー創出力は、ちょっとやそっとの設備投資額など軽く吸収し、なおかつ株主還元する余力さえ残るという企業が現にあるじゃないかと。
さて、次にバランス・シートに目を通そう。
<確認事項>
A.
繰越利益剰余金の増加は当期純利益と配当の額と概ね一致。
B.
自己株式は自社株買いとリンクしている。
C.
償却費を上回る投資を続けてきたので、総資産は増加。
買収もあったので、のれんも増。米国基準ではのれんは非償却。
D.
この期間中、総資産増加22%に対し、当期利益は43%の増。
結果としてROAは向上。
E.
有利子負債は増えたが純資産も増えてるので、D/Eは変わらず。
負債・資本比率があまりにも同じなので、株主還元はB/Sを睨みながら慎重にコントロールしている可能性が高い。
F.
D,Eの結果としてROEも向上。
確認点は以上。ほぼすべての利益を還元しながら、積極投資を行い、財務体質を悪化させず、利益も増やす。そういう企業が、存在するんです。経営するにあたってそういう事実を知ってるのと知らないのでは大違い。私はそう思う。
[ 銘柄分析 ] Walt Disney -事業環境・P/L編-
ウォルト・ディズニー社は、売上・利益面で最大規模のケーブルネットワーク事業が数々の逆風に晒されつつも、強力なコンテンツが揃っているため、映画事業、テーマパーク事業、グッズ販売事業の飛躍的な成長が見込まれるので、予想PER15倍くらいの今ならお買い得じゃないかな、というのが前回の大まかな概要だった。
そして今回はキャッシュフローとバランス・シートに目を通してみる。
Walt Disney Cash Flow
すぐ後に2011年度末と2015年度末のバランスシート比較表も載せるので、C/F表を見てB/Sがどのようになるのか想像しながら見ると良い訓練になると思う。
上記の過去4年のキャッシュフローにおいて、個人的に注目すべき点を以下に列挙してみる。
① 減価償却費と設備投資のバランス
2,5行目
全ての年で設備投資額が償却費を上回っている。B/S的にはこれにより有形無形固定資産はその差額分だけ増加する。
設備投資の8割、償却費の7割以上はParks and Resorts部門に対するものだ。近年は上海ディズニーランドの建設、ディズニーワールド、香港ディズニーランドの拡張などに設備投資費用が投入された。前回のP/L編で確認した通り、拡張投資は同セグメントの売上・利益に確実に結びついているようだ。
② 安定して増加する営業CFとフリーキャッシュフロー(FCF)
4,8行目
償却費を上回る投資が継続的にある企業なら、FCFがマイナスになるなんてのは良くあることだ。しかし、ディズニーのFCFは一度もマイナスに沈んでいないどころか、一貫して増加し続けてさえいる。キャッシュの最大の源泉は「利益」だ。当期利益をベースとする豊富かつ持続成長する営業CFが巨大な投資額を悠々カバーしている。
③ 総還元性向
1,8,9,10,11行目
4年累計の当期純利益29,665百万$に対して、配当+自社株買い合計26,695百万$。総還元性向は90%ということになり、REIT並みの還元率だ。FCFに対する還元性向は100%を超えており、足りない分は借入金でまかなっている。
人によって色々な感想が出てくるものと思うが、この数値を見て私が感じるのは、本物の高収益企業が「成長のため」という名目で増資を行うのは余程のことがない限り許容されるべきではないということだ。高収益がもたらすキャッシュフロー創出力は、ちょっとやそっとの設備投資額など軽く吸収し、なおかつ株主還元する余力さえ残るという企業が現にあるじゃないかと。
さて、次にバランス・シートに目を通そう。
<確認事項>
A.
繰越利益剰余金の増加は当期純利益と配当の額と概ね一致。
B.
自己株式は自社株買いとリンクしている。
C.
償却費を上回る投資を続けてきたので、総資産は増加。
買収もあったので、のれんも増。米国基準ではのれんは非償却。
D.
この期間中、総資産増加22%に対し、当期利益は43%の増。
結果としてROAは向上。
E.
有利子負債は増えたが純資産も増えてるので、D/Eは変わらず。
負債・資本比率があまりにも同じなので、株主還元はB/Sを睨みながら慎重にコントロールしている可能性が高い。
F.
D,Eの結果としてROEも向上。
確認点は以上。ほぼすべての利益を還元しながら、積極投資を行い、財務体質を悪化させず、利益も増やす。そういう企業が、存在するんです。経営するにあたってそういう事実を知ってるのと知らないのでは大違い。私はそう思う。
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