金利上昇と法人減税のコンボが高レバレッジ企業にもたらすもの
ご存知かどうか知らないが、私は借入が多い高レバレッジ企業が好きだ。そんなポートフォリオに金利上昇&法人減税が降りかかってきたら、低レバレッジ企業で占められた堅牢なポートフォリオに対する相対パフォーマンスは悲惨なことになる。あなたはきっとそう思っていることだろう。脳裏によぎる理屈は次のようなものだ。
果たして事はそう簡単に運ぶかな。シミュレーションをしてみよう。
リスクフリーレート : 借入金利(税前)と等しい
リスクプレミアム : 5%
株主資本コスト : リスクフリーレート + リスクプレミアム
[変動条件]
・金利は2%から4%に上昇する。
・法人税率は40%から25%に低下する。
この条件で、ROICが等しい低レバ社(借入100, 株主資本900)と、高レバ社(借入900, 株主資本100)のEVAスプレッド(ROIC-WACC)の変化を比較する。言うまでもなく、before / afterでEVAスプレッドが相対的に大きい方のパフォーマンスが高くなる。
ごちゃごちゃと色々な数値が並んでいるが、とりあえず黄色でハイライトしたEVAスプレッドに着目していただきたい。ROICが同じであれば、資本コスト(B列)が低い借入金に依存している高レバ社のEVAスプレッドが大きく、レバレッジによって企業価値を高めているということがわかる。
とはいえ、この企業価値の差は現状の株価に織り込まれているはずなので、状況の変化時における投資パフォーマンスの違いを検証するのはここからが本番だ。では、金利を上げて、法人税率を下げてみよう。
おわかりになるだろうか。EVAスプレッドは、低レバ社が0.8% → 0.6%と縮小したのに対し、高レバ社は5.4% → 5.4%と横ばいを維持した。つまり、金利上昇&法人減税のコンボは、事前の予想に反して高レバ社に有利に働く結果となった。
数値をつぶさに見れば理由はすぐにわかるのだが、私から解説を加えておこう。金利上昇に伴う支払利息増加のデメリット要因が限定的なうえ、法人減税で当期利益まで上昇するはずの低レバ社のEVAスプレッドが縮まったのは、株主資本コストの上昇が原因だ。株主資本コストは「リスクフリーレート(借入金利と等しい前提)+リスクプレミアム(固定値)」のため、金利上昇が実はP/Lには表れない形で低レバ社の加重平均投下資本コスト(WACC)を上昇させていたのだ。
一方、高レバ社のWACCは借入型の資本構成ゆえに借入コストの変化に大きく依存するのだが、金利は税務計算上、損金算入されるため節税効果が働く。したがって、2%の金利上昇はそのまま資本コストの上昇とはならないのだ。
借入コストのbefore / after を確認すると、1.2% → 3.0% と1.8ポイントの上昇にとどまっている。2%の金利上昇は株主資本コストを2ポイント上げるのに対し、借入コストは1.8%しか上げなかった。この0.2ポイントの差が、EVAスプレッドの相対変化差につながっている。
だからキャッシュフローさえ安定していれば、高レバレッジ企業の投資家は金利上昇に身構える必要はないのだ。
『金利上昇は言うまでもなくハイレバ企業の利息費用を増加させて利益を削り取る。そして、法人減税は確かにあらゆる企業にプラスに働くのだろうが、支払利息の節税効果を享受していた高レバ企業はその効果が減殺されることになるので、法人減税のメリットをフルに満喫できる低レバ企業に相対パフォーマンスが劣後する。』
果たして事はそう簡単に運ぶかな。シミュレーションをしてみよう。
【前提】
[固定条件]リスクフリーレート : 借入金利(税前)と等しい
リスクプレミアム : 5%
株主資本コスト : リスクフリーレート + リスクプレミアム
[変動条件]
・金利は2%から4%に上昇する。
・法人税率は40%から25%に低下する。
この条件で、ROICが等しい低レバ社(借入100, 株主資本900)と、高レバ社(借入900, 株主資本100)のEVAスプレッド(ROIC-WACC)の変化を比較する。言うまでもなく、before / afterでEVAスプレッドが相対的に大きい方のパフォーマンスが高くなる。
【検証開始】
Before -金利2%、法人税率40%-
ごちゃごちゃと色々な数値が並んでいるが、とりあえず黄色でハイライトしたEVAスプレッドに着目していただきたい。ROICが同じであれば、資本コスト(B列)が低い借入金に依存している高レバ社のEVAスプレッドが大きく、レバレッジによって企業価値を高めているということがわかる。
とはいえ、この企業価値の差は現状の株価に織り込まれているはずなので、状況の変化時における投資パフォーマンスの違いを検証するのはここからが本番だ。では、金利を上げて、法人税率を下げてみよう。
After -金利4%、法人税率25%-
おわかりになるだろうか。EVAスプレッドは、低レバ社が0.8% → 0.6%と縮小したのに対し、高レバ社は5.4% → 5.4%と横ばいを維持した。つまり、金利上昇&法人減税のコンボは、事前の予想に反して高レバ社に有利に働く結果となった。
数値をつぶさに見れば理由はすぐにわかるのだが、私から解説を加えておこう。金利上昇に伴う支払利息増加のデメリット要因が限定的なうえ、法人減税で当期利益まで上昇するはずの低レバ社のEVAスプレッドが縮まったのは、株主資本コストの上昇が原因だ。株主資本コストは「リスクフリーレート(借入金利と等しい前提)+リスクプレミアム(固定値)」のため、金利上昇が実はP/Lには表れない形で低レバ社の加重平均投下資本コスト(WACC)を上昇させていたのだ。
一方、高レバ社のWACCは借入型の資本構成ゆえに借入コストの変化に大きく依存するのだが、金利は税務計算上、損金算入されるため節税効果が働く。したがって、2%の金利上昇はそのまま資本コストの上昇とはならないのだ。
借入コストのbefore / after を確認すると、1.2% → 3.0% と1.8ポイントの上昇にとどまっている。2%の金利上昇は株主資本コストを2ポイント上げるのに対し、借入コストは1.8%しか上げなかった。この0.2ポイントの差が、EVAスプレッドの相対変化差につながっている。
だからキャッシュフローさえ安定していれば、高レバレッジ企業の投資家は金利上昇に身構える必要はないのだ。
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