各種保険会社 支払率比較

2017年度決算より。
「支払率=(保険金支払額+責任準備金繰入額)/保険料収入」とする。
支払率が低いほど、被保険者にとって分が悪い保険ということになる。


<医療保険>
Anthem:86%
   Aetna:83%

<生命保険>
 MetLife:86%
第一生命:113%

<ガン保険>
   Aflac:55%

<損害保険>
Travelers:65%
ソニー損保:60%


それぞれについてコメントしていこう。


医療保険
 公的保険が貧弱なアメリカでは民間医療保険会社は公益的な性質を持っているので、日本の民間医療保険とは似ても似つかないものだ。支払率も85%前後と高く、ぼったくり度は低い。
 アマゾン、バークシャー・ハサウェイ、JPモルガンの三社が医療サービスに参入してくるとの報道で、そのサービスは医療保険に違いないと市場に思われて医療保険株が軒並み暴落したことがあったが、「米国経済を蝕む寄生虫」にメスを入れるつもりなら、医療保険に目をつけるのはお門違いだと思う。私はこの利益率の低さこそがアメリカ医療保険株の競争優位性を形成していると考えており、ドリームチーム参入の噂には今のところ脅威を抱いていない。


生命保険
 イメージと異なり、ぼったくり度が意外と低いことを不思議に思われるかもしれない。特に第一生命の支払率は100%を超えている。これには二つのからくりがある。
 一つ目は、支払率の高い貯蓄性保険が含まれているため、数値が高くなりがちであること。純粋な生命保険だけだと、おそらくもっと低い。
 二つ目は、生命保険会社の支払サイクルは他の保険と比べて極めて長いため、被保険者から前受けした支払準備金の運用による投資収益が他の保険会社とは比較にならないほど多いことが挙げられる。例えば第一生命の資産運用収益は、保険料収入の4割以上もある。運用収益が保険事業単体の低採算をカバーしているのだ。バブル期に日本生命が世界最大の機関投資家といわれた所以が垣間見える。
(参考記事:ライフネット生命で保険会社を学ぶ


ガン保険
 支払率55%と、掛け金の半分しか返ってこないガン保険。ガンになるのは恐ろしい。しかし、実際にはあまりにも多くの人がガンに罹患してしまうため、支払う保険料に対し保険金は少なくならざるを得ないし、半分近くも中抜きされてしまえばなおさらだ。率直に言ってガン保険には入る必要がないので、詳細な分析は必要ない。


損害保険
 支払率はガン保険並みにとても低い。しかし、損害保険は無益と断じることが難しい。それは保険の本来の目的に合致したサービスを提供しているからだ。すなわち、火災保険や海上保険、自動車保険の一部は、極めて発生確率が低いもののいざ発生すれば個人では負担しきれない甚大な被害を被るリスクを、複数の加入者で分散しようという互助的な性質を持っている。ここは見逃してやろうじゃないか。

コメント

  1. 公的保険制度の充実した日本では医療保険やガン保険に入る意味はないと思います。
    支払率からみる保険・・・とても参考になりました。

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    1. 日本において民間医療保険とがん保険はともに無意味。これは「あらゆる人にとって」と前提をつけていいほど自明の事実だと私も思います。
      以前、安定的な収益が魅力でアフラック株を持っていたことがあったのですが、日本人の金融リテラシーが向上して長期的にがん保険加入率が下がるかもしれないと思い、ポジションを解消した経緯があります。

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  2. idecoは利用していますか?

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